2015 Fiscal Year Research-status Report
水中の不純物の影響を考慮した接近する界面間に形成される液膜の動的挙動の解析
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15K17976
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小笠原 紀行 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00552184)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 液膜 / 光干渉計 / 気泡クラスタ / 光干渉計 / 界面活性剤 / 電解質 |
Outline of Annual Research Achievements |
【2色光源を用いた光干渉計の構築】顕微下において絶対膜厚分布の動的な変化が計測可能となる2色光源を用いたレーザー干渉計を構築した.これにより,可視光の波長の1/4倍程度(隣り合う明暗線の位置での膜厚の相対値)の解像度で,時間変化する液膜の絶対膜厚分布の推定が可能となった. 【薄い液膜の排水破断過程における電解質の影響の解析】構築した光干渉計により,気泡が固体壁に衝突する際に形成される固体壁面と気液界面間の薄い液膜を対象とした計測を行い,水中に含まれる電解質による排水破断過程への影響を解析した.数マイクロメートル程度と比較的厚い膜厚の時には電解質の影響はないが,さらに薄い状態では破断のタイミングが遅れ,純水に比べて破断が起こりにくくなる傾向があった.また,電解質の種類による違いも確認され,それらの気泡合体に及ぼす影響と定性的な一致をみた. 【斜め平板下を上昇する球形気泡群のクラスタ化挙動に関する解析】二次元的な拘束を受ける球形気泡の群運動に対して,とくに気泡表面の境界条件による影響を解析するため,界面活性剤溶液(ノースリップ)と電解質溶液(フリースリップ)をそれぞれ用いた比較実験を行い,気泡群のスラスタ化に際する気泡間相互作用を解析した.まず,従来の研究により明らかになっているように,二つの気泡は気泡の上昇方向に対して横方向の配置が安定的であり,多数気泡では横一列に並んだ構造をとりやすいことが再現された.また,気泡レイノルズ数や気泡表面の境界条件(フリースリップ,ノースリップ),気泡数密度による影響を明らかにするため,気泡中心の動径分布関数,平均的な二気泡の相対速度分布による定量的な評価を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液膜の実験に関しては,初年度である本年度の目的であった計測システムの構築及び薄い液膜の実験は,ほぼ計画通りに遂行することができた.干渉計の落射照明として赤と青のLED光源を用い,さらにカラーの高速度カメラを併用することで,波長の異なる二種類の干渉画像の撮影するシステムを構築し,絶対膜厚分布の推定値が高時間解像度で取得可能となった.計測対象としては,硫酸マグネシウム溶液と酢酸ナトリウム溶液の二種類を用いることで電解質の種類による排水破断過程への影響の評価に成功し,従来から報告されている二気泡の合体確率との比較において,液膜破断のタイミングが定性的に一致することがわかった.その際,破断以前のディンプル形状の形成や薄膜化の進行は,純水との比較においてほとんど相違のない結果が得られた. また,気泡クラスタの実験においては,気泡表面の境界条件の違いによる影響を評価することができた.既存の傾斜角可変型チャネルに対し,気泡付着の防止のため全面をガラス製に改造した装置を制作し,気泡レイノルズ数が50から200程度の範囲での実験が可能となった.これにより,斜め平板下を上昇する球形気泡群の運動に関して,広い気泡レイノルズ数の範囲において,気泡表面の境界条件の影響を調査することができた.具体的には,気泡径分布,動径分布関数による気泡群の分布の様子,二気泡間の相対速度の統計量による気泡間相互作用等について定量的な評価を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
液膜の排水破断過程の実験に関しては,膜厚分布形状の時間変化や破断のタイミング等の観測を通して,電解質の種類の影響に対する評価はある程度可能となっている.しかしながら,特に破断の最終段階における現象は非常に高速であり,液膜厚さがサブマイクロメートル程度となることから,より時空間解像度の高い計測を試す必要性がある.また,破断のタイミングは本質的にはランダムな現象と考えるが,実験結果に対しては,本質的なランダムさ以外に装置や溶液中の汚れの影響を大きく受けるという問題がある.従来から,溶媒に超純水を用いる等の対策をとっているが,さらに今後はアッシャーによるガラス基板の洗浄等のプロセスを追加し,汚れの影響を極力排除するように努める.また,これまでの計測対象は液膜形状のみであったが,今後は相互作用における力を直接的に測る実験を試みる予定である. 斜め平板下における球形気泡群の運動においては,二気泡間相対速度の定量的な評価を通じて気泡間相互作用に関する知見が得られている.その際,既存の研究における純粋な球形二気泡間の相互作用に関する知見との比較考察を行っているが,本実験においては気泡数密度が高く,注目する二気泡以外の周囲の気泡の影響が重畳された結果が表われているため,その相違点については不明瞭な点が多く存在する.したがって,より気泡数の少ない状態の再現を目指し,極限的には二気泡のみの実験から段階的に気泡数を増加できるような実験装置の改良及び解析を行う.
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Causes of Carryover |
掲載確定の論文の投稿料の支払いが未定であるため.実験資材と消耗品が当初の見積額を下回ったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主には,液膜の膜厚分布計測システムの改良及び静止流体中の斜め平板下における気泡群の実験装置の改良に関わる物品費が必要となる.また,計測に際する光学部品や汎用機器の購入も予定している.実験データの取得後に必要となる,データ処理用PC,ソフトウェア及び文献を購入する. 研究成果の公表のため,国際学会及び国内学会への参加を予定しており,その旅費及び参加登録費に本研究費を充てる. 年度末には,研究データ及び装置の保存のため,データ記録機器及び装置の保守に関わる物品の購入を予定している.
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Research Products
(6 results)