2015 Fiscal Year Research-status Report
拘束系の正準理論によるマルチボディシステム解析の並列処理最適化と状態推定への応用
Project/Area Number |
15K17994
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
原 謙介 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (70508259)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Rotationless formulation / 局所Lagrange multiplier / マルチボディダイナミクス / 流体関連振動 / 微分代数方程式 / 正準理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,並列処理を想定した解析モデルの構築とそれに基づいた運動方程式の導出と妥当性検証のための予備実験を行った. 構造系の定式化では,空間運動の記述に用いる回転パラメータに起因した数値計算上の問題を回避するため,Rotationless formulationの導入を試みた.具体的には,数値積分の時間刻みのオーダを考慮し,運動の増分量を用いて運動を記述する方法と,回転行列の各成分の間に存在する代数関係を拘束式として系に組み込む方法の2種類の定式化を行った.後者は当初の予定になかった方法であるが,要素結合を表す拘束式を簡潔な形で表せる点や計算付加の少ない数値積分法を導入できるという点から新たに導入を試みた.一方,流体系の定式化では,修正 Morisonモデルに基づいた定式化法を導入した. 次に,全体系の運動方程式の導出では,Local Lagrange multiplier法による定式化を試みた.この手法では,系を複数のサブシステムに分割したのち,結合点に仮想的な節点自由度を付加して拘束条件によって全体系を構築する.意図的に拘束を付加して定式化を行うという点で本研究の方針に合致しているが,構造系の定式化に上記の新しい方法を導入したため,計算精度・効率に関してはさらなる検証が必要である. また,予備試験として水槽内に発生させた波による水中のチェーンの動的挙動の計測を行った.浮体とチェーンの間の連成挙動の観測実験は行わなかったが,これは今年度に行った定式化により,浮体とケーブルのモデル化が適切に行われれば,複数の構造からなる系やレイアウト変更に対して柔軟に対応可能であり,かつ並列処理モデルの妥当性検証の観点からも一般性を失わないことが分かったためである.これを踏まえ次年度実施する実験では,効率的に研究を進められるような簡略化した浮体とチェーンの連成系の装置を考案して研究を進める.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
浮体-ケーブル連成系のレイアウト(位置レベルの拘束)に相当する拘束式が非線形関数を含む複雑な代数方程式となるため,数値計算での収束性の問題を見越して当初予定していた定式化手法以外の方法についても検討を行った.この方法も空間運動の数値計算を行う際に課題となる,回転に関する物理量の表現に修正を加えたRotationless formulationの一種であり,系の自由度が多少増加するものの,拘束式をより簡潔な数式で表現できることに加え,計算負荷の少ない数値積分法を導入できるという特徴がある.このように,当初予定していた手法と合わせて二通りの方法を並行して進めることとなったため,数値計算と状態推定に用いる数理モデルに関して検討項目が増加し,計画に遅れが生じる原因となった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に得られた知見をもとに,引き続きモデル構築,運動方程式の導出を行い,それらをベースに状態推定アルゴリズムを構築する.さらに,GPUによる並列処理のための開発環境であるCUDAとOpenCVを用いて計測用のプログラムを作成する. まず,Rotationless formulationとLocal Lagrange multiplier法に基づいた離散時間モデルをベースとした状態推定アルゴリズムの構築を行う.具体的には,(1)非線形系にも適用可能な拡張カルマンフィルタと(2)静力学解析により算出した平衡点からの微小振動を表す線形化モデルを利用した線形カルマンフィルタを用いた 2 種類の状態推定器を設計する.(1)では導出される数理モデルが複雑な数式によって表されることが想定されるため,計算性を考慮して簡略化した数理モデルを想定した(2)に関しても検討を進め,柔軟に計画の変更に対応できるようにする. また,状態推定器の設計のため実験装置の改良を行う.浮体の運動の計測にはジャイロセンサ,ケーブルの動的挙動の計測には画像処理を用いて状態推定に必要な参照データを取得する.画像計測では,デジタル画像相関法をベースに画像処理による変位計測プログラムを作成し,処理時間や精度,並列処理の効果を調査する.また,数学モデル側と状態推定器側の双方から処理の効率化を検討していたが,平成27年度の実施結果を踏まえ,数学モデル側で用いる並列化手法を当初予定していたものからLocal Lagrange multiplier法へ変更した.この変更に伴い,導出された数理モデルの特徴に応じて状態推定器の設計についても変更の必要性が生じる可能性があるため,相補フィルタの設計に関しては計測データと数理モデルの相性を検討しつつ,推定精度・処理速度の観点から適切な方法を検討する.
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Causes of Carryover |
予備解析の結果を実験装置の設計に反映させるため,前倒し請求を行うことで当初予定していた加振器よりもハイスペックなものを導入したが,他の予算により購入した制御用のアンプがこの加振器にも使用可能であったため,その分の金額が繰越となった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
数値計算と実験(画像処理・撮影)に用いるPCサーバ(並列処理用GPUオプション付)のスペックのアップに充てる予定である.
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Research Products
(3 results)