2016 Fiscal Year Research-status Report
マルチボディ・有限要素の統合モデル化に基づくクラックのインテリジェント検出
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15K17995
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
安藝 雅彦 日本大学, 理工学部, 助教 (60560480)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ロータダイナミクス / マルチボディダイナミクス / 有限要素法 / 機械力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
長期間運転する回転機械では疲労によるクラック発生は宿命的であり,早期クラック検知は重要な課題である.現在クラックのオンライン推定は行われているが,クラックの有無の判別のみであり,クラック位置と深さまで検知することは困難である. クラックロータの動的挙動は複雑であるが,マルチボディダイナミクスを活用することで簡易かつ高精度な動的挙動の予測が可能である.本研究では,簡易にクラックロータの動解析を実施するためにマルチボディモデルと有限要素モデルを組み合わせた統合モデルを提案することが目的である.これを実現するために,以下課題Ⅰ~Ⅳを設定した.課題Ⅰ「柔軟MBDを活用したクラックモデルの構築」,課題Ⅱ「クラックロータの製作および回転実験」,課題Ⅲ「提案モデルを用いた疲労進展解析手法の開発」,課題Ⅳ「提案モデルを用いたクラック検出手法の構築」 これらの課題の中で平成28年度は平成27年度に引き続き,課題Ⅰ「柔軟MBDを活用したクラックモデルの構築」を実施した.これはマルチボディ・有限要素の統合モデルによるクラックロータモデルを回転軸の正常部を剛体要素とばね要素を組み合わせて表現し,かつクラック部に有限要素モデルを用いる回転軸の統合モデルを構築し,クラックを含むロータ軸のモデル化を行った.この統合モデルの妥当性を検証するために,有限要素によるクラックロータモデルと比較した.その結果として,統合モデルによるクラックロータモデルの有効性が確認された. また,平成28年度に研究代表者が大学を移籍したことに伴い実験環境が変化したため,クラックロータ実験装置の構築など実験環境の整備を行っている.実験環境が整備でき次第,課題Ⅱ「クラックロータの製作および回転実験」,課題Ⅳ「提案モデルを用いたクラック検出手法の構築」が実施できるように準備を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が大学を移籍したことに伴い研究環境が変化したため,研究にやや遅れが生じたが,オープンクラック軸のマルチボディ・有限要素統合モデルの構築まで完了した. 課題Ⅰ「柔軟MBDを活用したクラックモデルの構築」のテーマに関しては,柔軟MBDの手法により回転軸の正常部を剛体要素とばね要素を組み合わせて表現し,かつクラック部に有限要素モデルを用いる回転軸の統合モデルを構築し,クラックを含むロータ軸のモデル化を行った.回転軸の統合モデルの妥当性を評価するために,この提案モデルを用いたシミュレーションを実施し,回転軸の有限要素モデルと比較することで,統合モデルをクラックロータ軸に適用した場合の振動特性の妥当性を評価した. 課題Ⅱ「クラックロータの製作および回転実験」のテーマに関しては,研究環境が変化しクラック軸の実験装置が新たな所属研究室に配備されていないため,実験装置の構築を行っている.したがって,本年度の実施内容は平成27年度に取得したデータを用いて,データ解析を行うにとどまっているが,課題Ⅲ「提案モデルを用いたクラック検出手法の構築」を実施に必要な実験データまでは取得できており,次年度実施ずる課題Ⅳのクラック検出手法に用いる機械学習の教師データとして用いることは可能な状況である. 以上の現在までの進捗を踏まえ,平成29年度は課題Ⅰの成果および課題Ⅱの成果を用いて,課題Ⅳのクラック検出手法に用いるための機械学習の教師データを構築し,クラック検出が可能であるかを検証する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に研究代表者が大学を移籍したことに伴い実験環境が変化し,クラック軸の実験装置が新たな所属研究室に配備されていないため,クラックロータ実験装置の構築など実験環境の整備を行っている.平成28年度はクラック軸を一定速度で回転させるためのモータとインバータ制御盤を準備した.平成29年度は上記モータとインバータ制御盤を用いてクラックロータ実験装置を構築する予定である.実験装置を構築するために,クラック軸の両端を玉軸受で支持するための軸受台の製作,軸受台を設置するためのレール,安全装置として回転するクラック軸を覆うカバー,モータ回転軸とクラック軸との間の動力伝達機構を製作する予定である.実験環境が整備でき次第,課題Ⅳ「提案モデルを用いたクラック検出手法の構築」を実施する. 平成28年度に実施した課題Ⅰ「柔軟MBDを活用したクラックモデルの構築」の成果を用いて,課題Ⅳ「提案モデルを用いたクラック検出手法の構築」を実施する.クラック検出手法の構築に必要となる実験データは平成27年度に取得した実験データを用い,課題Ⅰで構築した統合モデルを用いて作成する振動特性データとともに使用する.これらのクラック軸の振動特性データを用いて,クラック検出を実施するための機械学習の教師データ(それぞれのクラック位置,クラック深さの場合の振動特性データを用いる)を作成する.この機械学習に基づくクラック検出手法を用いることでクラックの位置と深さを推定するシステムを構築する.
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Causes of Carryover |
当初の予定では,マルチボディダイナミクスソフトウェアSIMPACKのライセンス購入やクラック軸の作成費に研究費を充当する予定であった.しかし,平成28年度に研究代表者が大学を移籍したことに伴い実験環境が変化し,クラック軸の実験装置が新たな所属研究室に配備されていないため,クラックロータ実験装置の構築など実験環境の整備を行っている.そこで平成28年度はモータとインバータ制御盤を調達した.上記の予定変更の理由で,当初予算と平成28年度使用額との間に差異が生じた.モータとインバータ制御盤を安価で調達することができたため,次年度使用額が発生した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に研究代表者が大学を移籍したことに伴い実験環境が変化し,クラック軸の実験装置が新たな所属研究室に配備されていないため,クラックロータ実験装置の構築など実験環境の整備を行っている.したがって,次年度はクラックロータ実験装置の構築を実施する予定である.このクラックロータ実験装置の構築のために,平成28年度研究費の残額と平成29年度の予算を使用する. 具体的には,平成29年度はクラック軸の両端を玉軸受で支持するための軸受台の製作,軸受台を設置するためのレール,安全装置として回転するクラック軸を覆うカバー,モータ回転軸とクラック軸との間の動力伝達機構を製作する予定である.これらを製作することによって,平成27年度に実施していたクラック軸の回転試験と同等の実験が可能となる.
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