2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17999
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Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
皆川 佳祐 埼玉工業大学, 工学部, 准教授 (30453799)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 耐震・免震設計 / 機械力学・制御 / 疲労損傷 / 疲労寿命 / 地震 / 防災 / ヒステリシスエネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,「継続時間の長い地震」や「多発する余震」などに対する耐震性の評価が課題となっている.これらの課題について,我々はエネルギーによる評価手法を提案し,破損とエネルギーの定性的関係を示してきた.そこで本研究では,設計図面,材料試験等のデータから,破損に必要なエネルギーを定量的に算出する手法を構築することを目的としている. 研究初年度の平成27年度は,疲労寿命曲線と履歴曲線モデルから,理論的に破損に必要なヒステリシスエネルギーを算出することを目的として「1.材料の疲労特性に基づく破損に必要なヒステリシスエネルギーの算出」に,有限要素解析から破損に必要なヒステリシスエネルギーを算出することを目的として「2.ヒステリシスエネルギーから総エネルギー入力への変換」に取り組んだ. 上記1では,引張試験を実施し,応力ひずみ曲線を二本の直線でモデル化した.また,同モデルをベースに1サイクルで吸収するエネルギーの算出式を構築した.ここで,引張試験の結果から破損に要したエネルギーを求めたところ,引張速度が小さいほど破損には多くのエネルギーを要する傾向が見られた.次に,疲労寿命の推定式から疲労寿命を求め,1サイクルで吸収するエネルギーに乗じることで,破損に要するエネルギーを算出する手法を構築した. 次に上記2では,まず,検討対象とする供試体(幅4~6mm,厚さ2~3mm,質量部質量0.1~0.2kgのものを計3種類)を設計した.次に,設計した供試体について,非線形有限要素解析を実施し,荷重―変位ベースでのエネルギーを算出した.現在,各要素のヒステリシスエネルギーから供試体全体に入力されるエネルギーを求めている最中であり,これが達成されることで,設計図面,材料試験等のデータから,破損に必要なエネルギーを定量的に算出することができる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度中に「2.ヒステリシスエネルギーから総エネルギー入力への変換」が終了する計画であったが,現在も各要素のヒステリシスエネルギーから供試体全体に入力されるエネルギーを求める作業を実施中である. これは,「1.材料の疲労特性に基づく破損に必要なヒステリシスエネルギーの算出」において実施した引張試験において,引張速度と破損に必要なエネルギーの間に関係があることを確認したことに発端する.引張速度の影響がどのくらい破損に要するエネルギーに表れるのか,また,その影響をどのように本研究で構築する手法に組み込むかを検討するため,引張試験の試験数を計画よりも多く実施したためである. ただし,遅れは軽微なもので,追加の実験などはないことから,「やや遅れている」と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況はやや遅れているが,平成28年度は当初計画通り,正弦波による振動疲労破損実験,地震波による振動疲労破損実験を実施する.実験結果を平成27年度に構築している手法との比較することで,手法の誤りを修正し,高度化を行う予定である. ここで,現在も実施中の手法の構築にあたっては,過去の実験結果などとも比較しながら構築することで,本年度計画している実験を実施する前に手法の精度を高める方策を実施する.
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」に記載の通り,本研究実施に伴い新たな知見が明らかになり,その対応で進捗状況に遅れが生じたためである. 計画では,平成27年度の物品費として平成28年度実施予定の実験供試体製作費を計上していたが,上記の通り研究に遅れが生じたため実験供試体を作成することができず,物品費が執行されなかった.ただし,平成27年度中に実験供試体は設計済みである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度中に実験供試体を設計済みであり,平成28年度の研究が開始した時点で,速やかに製作に移る.
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