2015 Fiscal Year Research-status Report
走行中に非接触充電可能な自動搬送車用非接触充電装置の開発
Project/Area Number |
15K18022
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
今給黎 明大 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (30710264)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非接触給電 / 走行中給電 / インバータ / 無人搬送車 / 自動搬送車 / AGV / 中継コイル / SiC |
Outline of Annual Research Achievements |
工場の生産ラインに用いられる自動搬送車を対象に,省エネルギー化,作業工程の高効率化を実現するシンプルで安価な自動搬送車走行中充電システムの提案を目的とし,今年度の成果として以下を得た。 1.前年度に構築した非接触給電装置について,電力変換器に用いたパワーデバイスをIGBTからSiC-MOSFETへ置き換えることによって,給電効率を5%改善できることを実験により確認した。このとき,単相インバータの入力電力と負荷抵抗の出力電力の実測値から求めたシステム効率は,82.5%であった(周波数:25 kHz, 送電電力:560 W)。システム効率低下の主要因としては,コイル効率の低下が挙げられるため,コイル効率向上のために,システム全体の高電圧化と巻線材料の変更とフェライトコア形状の変更に着手した。 2.電動車両駆動装置と非接触給電装置を一体化したシステム(提案システム)を試作し,非接触給電を用いた場合のバッテリ充電動作とモータ駆動動作の評価を行った。実験により,非接触給電を用いて,12 Vのバッテリを一定電流(1 A~3 A)で充電できることを確認し,誘導機(250 W出力)を一定速度で駆動できることを確認した。これらの結果より,非接触給電時において直流リンク電圧を一定に制御できれば,非接触給電によるバッテリの充電とモータの駆動ができることを確認した。実験では,給電コイルと受電コイルの位置を固定した状態で評価しており,今後は,給電コイルと受電コイルの位置が変動する場合の特性について評価を行う。 3.シミュレーションによって,給電コイルと中継コイル(受電コイル)間の距離を調整することで,直流リンク電圧を調整できることを確認した。また,実験において直流リンク電圧を一定に制御するために,中継コイルの位置を制御信号によって調整できる中継コイル用の一軸移動装置を新たに試作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度については,平成28年度の研究計画に挙げた電動車両駆動装置と非接触給電装置を一体化したシステムの試作を行い,基本的なバッテリ充電動作とモータ駆動時の動作を確認できたため,概ね達成できたと判断した。バッテリ充電動作については,バッテリ電圧の値と直流リンク電圧の値の関係によって,バッテリ電流を一定電流で制御できない条件があった。このため,バッテリ電流の一定電流制御を行うまでに時間を要したが,最終的には非接触給電によってバッテリを一定電流で充電できるに至った。 また,システム全体の高効率化のため,上記の電動車両駆動装置と非接触給電装置にはSiC-MOSFETを実装し,非接触給電装置については,SiC-MOSFETを実装したことによるシステム効率の改善効果を評価できた。さらに,システム効率低下の要因としてコイルの効率低下を確認することができ,コイルの改良に向けた設計に着手することができた。これらの検討状況からも順調に進展していると考える。 IGBTを用いた非接触給電装置については,給電コイルと受電コイルの位置ズレが生じる場合の伝送電力,伝送効率を評価した。ただし,給電コイルと受電コイルの位置ズレ時に生じる伝送効率低下の課題については,中継コイルの設計・試作が途中であったため,課題解決の検討には至っていない。今年度は中継コイルを可変できる実験設備を試作できたため,今後は,中継コイルを可変できる非接触給電装置を試作し,このシステムについて給電コイルと受電コイルの位置ズレ時の特性を評価する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の検討結果を踏まえ,今後の研究の推進方策として以下を挙げる。 1.中継コイル(受電コイル)を可変した場合の非接触給電装置の特性評価 中継コイルの設計・試作を行い,シミュレーションと実験によって中継コイルを可変した場合における給電コイルと受電コイルの位置ズレ時の伝送電力,伝送効率の評価を行う。なお,中継コイル,給電コイル,受電コイルについては,素線径の細いリッツ線とT形のフェライトコアを用い,巻数をそれぞれ変更して試作する。また,走行中充電を想定し,非接触給電によってバッテリを充電しながらモータを駆動する動作について,シミュレーションと実験により動作の検討を行う。 2.中継コイル(受電コイル)を可変する本方式と従来の非接触給電方式の比較 中継コイル(受電コイル)を可変する本方式と従来の非接触給電方式について,シミュレーションにより比較を行い,本方式の特徴を明らかにする。従来の非接触給電方式とは,非接触給電コイルの一次側と二次側それぞれに力率補償用の共振コンデンサを用いる方式を指す。
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