2015 Fiscal Year Research-status Report
世界初難分解性有機化合物PFOSの処理法の確立および産業応用のための大容量処理
Project/Area Number |
15K18023
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
王 斗艶 熊本大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (30508651)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大容量処理 / 高効率化 / ナノ秒放電プラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、パルス持続時間5ns、電圧立上り及び立下り時間が其々2ns を有する「ナノ秒パルス放電」の高効率な大気汚染物質処理実績に注目し、未だ工業的処理法が確立されていない難分解性有機化合物PFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)水溶液の分解を行い、そのうえ産業応用のための大容量処理を実現することを目指している。 平成27年度は、PFOSの分解率を向上させるために処理システムのパラメータ最適化(電極形状・プラズマ中への処理溶液の混入方法・注入電力)を図り、かつプラズマ法によるPFOSの分解経路を明確にするために、IC(イオンクロマトグラフ)及びHPLC/MS(液体クロマトグラフ/質量分析計)を用いて処理後のサンプルを解析する計画であった。パラメータ最適化においては、処理サンプル液の供給方法として元来用いたノズル式噴射法を絶縁型シャワーヘッド式へ変更することで、より高電界となる中心電極領域において多くの処理溶液を接触させることに成功し、処理効率の向上へとつながった。また、雰囲気ガスとして使用する酸素ガスの流量特性を調べた結果、これまでの10L/minから100mL/minの低流量へ変化しても、処理結果に大きな変化は見られなかった。このことは、産業応用時の大容量処理においては、キャリアガスの大幅な節約につながることを意味する。電極形状については、放電プラズマと処理液の反応をより高効率に行うテーパー型電極の設計を終了し、製作段階にある。最後に、ICおよびHPLCによる処理後のサンプル解析は、その設置準備を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ナノ秒放電プラズマを用いた大容量液体処理に関するものであり、その処理対象物をPFOSとしている。平成27年度は、処理システムの性能向上を図るための工夫を図ることに重点を置き、「研究実績の概要」の項目で述べたように、処理システムのパラメータ最適化を図った。PFOSの分解率を評価するためには、これまでにTOC(全有機体炭素計)計を用いていたが、より正確な解析結果を得るためには、フッ素イオンの計測が可能であるICや組成変化を評価できるHPLC/MSを用いた計測が必要である。これらの計測機器はまだ設置段階にあるため、平成27年度は、処理システムの性能評価を行うために、PFOSの代わりに処理対象物を酢酸とした。酢酸は、オゾンとの反応が乏しく、オゾンによる分解が難しいため、放電処理等における有機廃水処理のモデル物質として利用されている。 以上より、平成27年度の進捗状況として、処理システム側は順調に進展しているが、処理対象物を暫定的に酢酸としたことで「おおむね順調」と判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
放電プラズマと有機物の処理に関して、処理溶液のpH値は重要なファクターである。今後は、処理溶液の初期pH値を変化させることによって、処理結果にどのような影響を与えるか評価する。また、pH値を変化させることで、雰囲気ガスとして使用する酸素ガスの流量特性に影響があるかどうかについても評価する。
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Causes of Carryover |
当初イオンクロマトグラフを購入して研究を進める予定でしたが、共同研究者が所有する該当機器の使用許可を得たため、本助成金をオートサンプラ購入に変更した。なお、オートサンプラはサンプリング濃度を調整するための機器であり、本助成事業で実施する実験のサンプリングには必要な装置である。オートサンプラの購入・使用により、本研究の成果を確実に排出できることとなる。 以上、購入予定機器の変更およびその関連消耗品にかかわる差額が「次年度使用額」の発生原因となる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究では、放電プラズマにより処理した溶液の組成分析を数多く行うため、その装置校正や消耗品に関わる金額を差額にあてる。また、処理結果により装置の仕様変更も必要となるため、装置仕様変更のための材料費にも使用する。
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Research Products
(7 results)