2015 Fiscal Year Research-status Report
ナノ秒パルス放電プラズマによる超小型水素製造装置の開発
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15K18031
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Research Institution | Sasebo National College of Technology |
Principal Investigator |
猪原 武士 佐世保工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (30634050)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | パルスパワー / 水素生成 / 放電プラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、水素社会の実現を目指した水素製造技術の開発が行われており、従来よりもエネルギー効率の高い、原料の調達が容易な原料による水素生成法の確立が求められている。本研究は、大気圧中において“ナノ秒”と極めて短い時間のパルス放電プラズマを用いることによって、超小型、かつ、高い発生効率を有する水素製造装置の開発を行うものである。平成27年度では、水素製造装置の開発のために、印加パルス電圧特性や溶液の状態と水素生成特性の関係を調べ、水素生成の最適条件を検討した。以下にその成果を示す。 1.水素の高精度な定量分析に向けた実験システムの構築を行った。実験による測定誤差をなくすために、ガスサンプラーを購入し導入した。これによって再現性の高い実験環境を確立できた。 2.印加パルス電圧の強度およびその極性が水素生成量に与える影響について調べた。印加パルス電圧の最大強度の増加に伴い水素生成量が増加することが確認された。また、正極性のパルス電圧を印加した場合、負極性の場合と比べて水素生成量が増加することが確認された。放電の観測から生成された放電プラズマの生成面積が水素生成の増加に伴って大きくなっていることが確認された。このことから放電プラズマと水の接触面積の増加が水素生成のための反応を促進していると推測した。 3.原料である水の導電率および初期温度が水素生成量に与える影響について調べた。水の導電率の増加に伴い水素生成量は増加した。このとき、放電プラズマの表面積の増加が見られた。一方で、初期温度(最大セ氏100度)を変化させた場合では、顕著な水素生成量は確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画における目的は、気液界面におけるナノ秒パルス放電プラズマの診断および最適条件の検討であった。上述の通り、印加パルス電圧特性や原料の状態が水素生成量に与える影響については概ね調べることができた。しかし、その最適条件を決定するまでには至らなかった。これについては次年度も継続して調査する必要がある。 よって、最適条件の決定までには至っていないが、実験は概ね順調に実施され水素生成特性の傾向を得ていることから、おおむね順調に進展している、と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究目的は、光学的観測による気液界面におけるナノ秒パルス放電プラズマの放電機構の観測である。計画通りに、発光分光計測によって気液界面における放電プラズマの化学種を同定しその温度計測を行い生成反応系の解析を行う。特に、水素原子の温度空間分布を中心に観測を行う予定である。この発光分光計測のために、新規の分光器を購入する予定である。また、前年度の印加パルス電圧特性や水の状態が水素生成量に与える影響についても継続的に調査を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初予算に計上していた短パルス電源および反応容器が、それぞれ予定より安く購入できたことで、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、平成28年度に購入を予定していた分光器の購入予算に使用する予定である。
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