2015 Fiscal Year Research-status Report
短周期超格子による窒化物系擬似InGaN混晶の連続的バンドエンジニアリング
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15K18036
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
今井 大地 千葉大学, 学術研究推進機構産業連携研究推進ステーション, 特任研究員 (20739057)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 1分子層InN / 短周期超格子 / 擬似混晶(秩序混晶) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、窒化物系InN/GaN短周期超格子(SPS)による擬似InGaN混晶の構造制御プロセスを高度化させた新たなバンドエンジニアリング手法の提案と、その有効性の検証を行い、更にはその素子応用へ向けた基盤技術の開拓を目的としている。本年度は、InN/GaN SPSの実効的バンドギャップエネルギーが、InN井戸層とGaN障壁層の層厚比だけでなく、SPS層の1分子層(1ML)InN面内被覆率によっても制御できる可能性に着目し、1 ML InN面内被覆率制御による擬似InGaN混晶バンドエネルギーの連続的変調の検証および実証と、そのメカニズムの解明を目指した。測定に用いた試料は、いずれもX線回折、透過電子顕微鏡観察により設計通りの周期構造が得られていることを確認した。以下に本年度実施した研究の進捗状況の概要を記す。 ①擬似混晶化するGaN障壁層厚の実験的・理論的検証 GaN障壁層厚n (ML)を9から4まで変えた1ML InN/nML GaN SPSの実効吸収端を励起スペクトル測定から導出し、GaN障壁層厚によるバンドエネルギーの変化を観測した。またシュレディンガー-ポアソン方程式を用いたシミュレーションを行い、隣接する1分子層InN量子井戸間での波動関数重なりを評価し、擬似混晶としての特性が発現するGaN障壁層厚を明らかにした。 ②InN面内被覆率制御による擬似InGaN混晶バンドエネルギーの連続的変調の実証 分子線エピタキシー法(MBE)により、InN面内被覆率を30-50%の間で制御した1ML InN/4ML GaN SPSs試料を作製し、InN面内被覆率による実効吸収端の変化を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①擬似混晶化に必要なGaN障壁層厚 GaN障壁層厚n(ML)を9から4まで変えた1ML InN/nML GaN SPSの実効的バンドギャップエネルギーを発光、励起スペクトル、吸収スペクトルから評価した。GaN障壁層厚が6ML以下になると、PLピークおよび実効吸収端の1ML InN量子井戸(GaN障壁層厚が十分厚い試料)に対する低エネルギーシフトが起こることを実験的、理論的に明らかにし、擬似混晶化に必要なGaN障壁層厚が4ML<n<7MLであることを明らかにした。 ②擬似混晶バンドギャップエネルギーの1分子層InN面内被覆率依存性 n=4の試料において、実効バンドギャップエネルギーが1ML-InN面内被覆率に依存して変化することを実験的に実証した。これにより、擬似InGaN混晶による連続的バンドエネルギー変調が可能であることが実証された。
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Strategy for Future Research Activity |
擬似InGaN混晶のバンドエネルギーがInN面内被覆率によって連続的に変調可能であることを実験的に実証することができた。そこで今年度は、擬似InGaN混晶のバンド構造、1ML InN面内被覆率によるバンドエネルギーの変調メカニズム解明に注力し、物性解析の観点から1ML-InNやInN/GaN SPS構造の積層構造モデルの解明などにも取り組むことで、デバイス応用へ向けた基盤技術の開拓を行う。
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Causes of Carryover |
当初はクライオスタットを光学・電気測定共に測定可能な仕様に改良することに予算を計上したが、電圧印加可能な光応答測定システムを別に構築したため、予算の執行を延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
電気測定について、まずは構築した電圧印加光応答測定システムにより対応することを試みる。これで対応可能な場合、擬似混晶のバンド構造、InN面内被覆率によるバンドエネルギー変調のメカニズム解明をさらに推し進めるために光学素子に更に予算を計上する。
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Research Products
(11 results)