2015 Fiscal Year Research-status Report
電子機器の信号系および電源系に生じるコモンモードノイズの統合的な低減設計法
Project/Area Number |
15K18052
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松嶋 徹 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00571415)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 環境電磁工学 / 差動伝送線路 / コモンモード |
Outline of Annual Research Achievements |
電子機器内部のプリント回路基板上に配線された線路や基板に接続されるケーブルにコモンモード電流が流れることにより、不要な電磁放射や信号品質の劣化を引き起こす。そのために、コモンモードの低減設計法の開発が重要な課題となっている。本研究では回路動作のための電流(ノーマルモード電流・ディファレンシャルモード電流)からコモンモードへの変換メカニズムを明確にし、回路設計の上流段階でのモード変換を抑制する回路設計手法の開発を行う。また、回路内部に発生する微小な寄生結合とモード変換や信号品質との関係を明確にする。 今年度は1チャンネルの差動伝送線路の構造が変化する点における等価回路モデルを検討した。特に、層間をまたいで配線されているような差動伝送線路において、層間ビアやそのパッド配線が寄生共振を引き起こし、その共振によって信号品質が著しく悪化することを示した。 さらに、共振により蓄積されるエネルギーに着目して共振キャパシタンスと共振インダクタンスを用いて等価回路表現した。等価回路の妥当性を検証するために、ダングリングビアと呼ばれる貫通ビアが線路に対して分岐となる構造を用いてその計算精度を確認した。また、ダングリングビアから不要放射が発生し、それによって共振のQ値は低くなるが、放射したエネルギーから等価抵抗を算出し、等価回路に組み込む方法を示した。 今後は、ビア構造によるコモンモードへの変換メカニズムの解明やその抑制法について検討をすすめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
層間ビアなどの伝送線路の不連続構造において生じる伝送特性劣化を表現するための等価回路構築を行い、その回路パラメータである電磁界エネルギーの蓄積を表現するキャパシタンスやインダクタンスの算出方法を提案した。一方で、当初課題では実測による評価も検討していたが、試験基板設計・試作の遅れによりそこまで至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の検討としては、信号線のような受動配線だけでなく、信号ドライバICにおけるコモンモード発生のメカニズムを等価回路を用いて検討する。 また、差動ドライバの出力インピーダンスとモード変換の関係を明確にし、低コモンモードとなるような励振方法を検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度では試験基板の作製を予定していたが、多くの検討を電磁界シミュレーションおよび回路シミュレーションで行った。また、モード変換を表現するモデル化には至っていない。試験基板試作は複数種類を同時に作成したほうがコスト面で良い。そのため、当該年度で使用する予定であった基板試作費や部品費は、次年度に行うモード変換を表現する等価回路モデルの評価用試験基板の試作費としてあわせて用いる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度で提案した等価回路モデルや、次年度検討するモード変換を表現する等価回路モデルを構築した後に、その妥当性や精度を検証するための試験基板試作および実装部品費に使用する。同時に、次年度以降に検討予定の非対称差動伝送線路の低コモンモード励振法について、その実現法を実証する基板試作に用いる。
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