2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K18081
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
西野 敦洋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 工学計測標準研究部門, 主任研究員 (40415724)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トルク / 力学量計測 / 電磁力 / ワットバランス / 精密計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、一様な静磁場中に置かれたコイルに電流を流すことでトルクが発生する原理に基づいたトルク発生装置を開発し、電磁力による高精度なトルクの計測技術を確立することが目的である。当該年度に実施した研究において、以下の成果を得た。①角速度・角度位置計測系を構築した。②電源を搭載した無線型電流・電圧計測装置を開発した。③永久磁石による異極対向型磁気回路及び矩形コイルを設計製作した。①②③をカップリング等により接続し、さらにサーボモータ等による回転駆動系と計測制御ソフトウエアの開発を行い、電磁力によるトルク発生装置を開発することができた。本装置による第一の実験では、静磁場中に置かれた矩形コイルを一定の角速度ωで回転させ、矩形コイルに生じる誘導起電力Vと矩形コイルの角度位置θをそれぞれ計測した。Vは、V = NABωcosθという関係(N:コイルの巻数、A:コイルの面積、B:磁束密度)があり、厳密な評価が困難であったN、A及びBを、Vが最大(Vmax)となる角度位置で評価することができた(Vmax /ω= NAB)。次に、本装置の矩形コイルに電流Iを流すとトルクTが発生し、Tは、Vmaxとなる矩形コイルの角度位置と同じ位置で最大(Tmax)となる。そのとき、Tmax = NABIという関係があり、これに第一の実験結果を適用することで、Tmaxω= VmaxIと表すことができる。従って、第二の実験では、無線型電流・電圧計測装置に搭載した電源より矩形コイルに電流Iを流してトルクを発生させ、Tmaxを電流・電圧・角度・周波数により評価することができた。以上より、本研究では、電磁力によるトルク発生装置を開発し、既存の方法(質量・重力加速度・長さによりトルクを評価する方法)とは異なる方法で、世界で初めて国際単位系(SI)にトレーサブルなトルクの実現に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度までに電磁力によるトルク発生装置を開発することができた。また、電流、電圧、角度、周波数からトルクを評価することが可能となり、世界で初めて電磁力によるSIにトレーサブルなトルクの実現に成功した。今後予定しているトルクによる電磁力と重力との同一性に関する実験的検証及び現在トルクの国家標準として用いられている小トルク発生装置との相互比較についても、新たな装置等の設計も完了しており、着実に準備が出来ている。よって、本研究は、電磁力による高精度なトルク計測技術の確立という目標の達成に向けて、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究により、電磁力によるトルク発生装置を開発し、電磁力によるSIにトレーサブルなトルクの発生に成功している。今後は、電磁力による高精度なトルク計測技術を確立するために、電磁力と重力との同一性に関する実験的検証と、現在トルクの国家標準として用いられている小トルク発生装置との相互比較を実施する予定である。本装置では、現在1 mN・mから50 mN・mの範囲でトルクを発生することができる。今後の研究を実施するために、まずは電源や電流・電圧計測装置の改良等を行い、トルクの発生範囲を拡大していく。そして、小トルク発生装置で校正されたトルク計測機器を用い、電磁力によって発生したトルクとの比較を行う。また、既に設計済みである重力による方法でトルクを発生させる装置を新たに開発し、電磁力によるトルク発生装置に組み込むことで、トルクによる電磁力と重力との同一性に関する検証実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
初年度に製作を計画していたトルクによる電磁力と重力の同一性検証実験に必要な機械部品の見積もりをとったところ、残予算よりも僅かに高額であったため、製作を翌年度に行うこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度製作を予定していた機械部品について、2年目の助成金と合わせて製作することを計画している。
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