2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18091
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
星野 健太 青山学院大学, 理工学部, 助教 (10737498)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 非線形制御 / 確率システム / 同次性 / 有限時間安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度と同様に,同次性と呼ばれる性質に基づき,収束率を保証する漸近安定化手法とその基礎となる安定性の解析について研究を行った.その結果,主に以下の二つの成果を得た. 一つ目は,確率システムの有限時間安定性の判別条件である.従来の確率システムの有限時間安定性の判別条件は適用できるシステムが限られていた.そのため,同次性に基づいた有限時間安定化を行おうとすると,従来の安定性の判別条件を用いることができず,有限時間安定性を理論的に保証することができないという基礎的な課題があった.本年度の成果によって,基礎的な課題が解決され,同次性に基づいて有限時間安定性や指数安定性などの安定性を扱うための理論的な基盤が整備された.これにより,当初想定していた目標が達成されつつある.この成果については,現在,学術誌に論文を投稿中である.また,安定性の理論は確率システムの基礎理論と更なる関連があることがわかり,現在,より発展的な課題についても研究を進めている. 二つ目は,確定システムについて,同次性を拡張した状態依存同次性と呼ばれる性質に基づいた有限時間安定性の判別条件を示したことである.昨年度までは同次性に基づいた制御則設計に取り組んでいたが,同次性を用いることができるシステムが限定されることがあった.本年度はこれまでの研究で得られた制御手法をより広いクラスのシステムに拡張するべく,従来の安定性条件を拡張した.有限時間安定性に関する研究の多くは同次性に基づいており,本年度に得られた結果は有限時間安定性に関する多くの研究に影響を与えることができる成果であると考えている.現在,この結果に基づいた制御則設計法を開発中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況を概ね順調に進展していると判断した理由は以下の2点による. 一つ目は,本年度の成果により,確率システムの有限時間安定性の基礎的な問題であった,判別条件を示すことができた点である.これにより,同次性を用いた制御則によって有限時間安定化するための理論的な基盤が整理できた.昨年度までは,制御則設計法は既に確立できていたものの,基礎となる有限時間安定性の条件が確立されていなかったために,限定的な結果しか得られていなかった.しかし,本年度に得られた成果により,同次性に基づいた有限時間安定化の基礎が整備され,一般的な結果を示すことが可能になった.また,有限時間安定性に関する基礎的な研究を行った結果,確率システムの基礎的な問題に関する研究課題へと成果が発展しつつあり,当初の目的の一つであった確率システムの有限時間安定化について一定の成果が得られたと言える. 二つ目は,確定システムについて,従来は同次性を用いて判別が行われていた収束率の判別を,状態依存同次性と呼ばれる性質に基づいたものに拡張した点である.昨年度までも同次性を用いた有限時間安定化手法について一定の成果が得られていたが,同次性を用いることができない制御対象が存在し,そのようなシステムに対する拡張が必要となっていた.本年度の成果として得られた,状態依存同次性に基づく有限時間安定性の判別条件は,同次性を拡張した状態依存同次性を用いて有限時間安定性を判別できるようにしたものとなっている.これにより,従来は同次性を用いるだけでは有限時間安定性を論じることができなかったシステムに対して,有限時間安定性を論じることが可能になった. 以上より,若干の研究課題については達成できていない点があるものの,上記の2点に代表される成果によって順調に進展していると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については,以下の2点を想定している.一つ目は,同次性によって確率システムの収束率を保証する制御手法の確立である.本年度までの成果により,有限時間安定性などの収束率を伴う安定性を一般的な状況で扱うことが可能になり,同次性に基づいた制御則設計を展開することが可能になった.そして,制御則設計については既に設計手法が確立しているので,本年度までの成果をまとめ,確率システムの制御則設計手法を外部に公表していく予定である.よって,本年度は主に論文投稿を行う.さらに,有限時間安定性条件は確率微分方程式の解の存在条件と深く関係することが判明したため,解の存在を保証する収束率保証付きの制御則設計法についても取り組んでいく予定である.二つ目は,収束率を保証する制御則設計手法を状態依存同次性に基づいて開発する.既に,本年度までの成果によって,同次性に基づいた制御則設計法が示されている.さらに,本年度の研究により,収束率を伴う安定性の判別の従来の条件の拡張として,状態依存同次性に基づいた安定性の判別条件が得られている.これらの成果に基づき,有限時間安定性などの収束率を保証する制御則設計を状態依存同次性を用いたものに拡張できると期待される.今後は,従来の同次性を利用した制御則設計法を状態依存同次性を用いたものに拡張し,従来よりも広いクラスのシステムに対して制御則を設計することを可能にする.そして,状態依存同次性に基づいた制御則設計の結果をまとめ,学術誌に投稿する.
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,旅費や物品費などが当初計画した時点の金額よりも低く抑えることができた点と,若干の計画変更に伴い,いくつかの学会の参加を見送ったことによる.次年度は本年度に得られた成果の発表に注力する.そのため,次年度の使用額としては,学会の参加費や論文誌への投稿料,および英文校閲等への支出を予定している.
|