コンクリート表面における亜硝酸イオンの溶出・浸透メカニズムと各種要因の影響

2015 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K18098
• Research Institution: Kitami Institute of Technology
• Principal Investigator: 井上 真澄 北見工業大学, 工学部, 准教授 (00388141)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 亜硝酸イオン / 亜硝酸リチウム水溶液 / 溶脱量 / 補修 / 表面被覆 / 暴露試験

Outline of Annual Research Achievements

亜硝酸塩系補修剤を施工した躯体面からの亜硝酸イオンの溶出量の把握を目的として、暴露実験を行った。亜硝酸塩系補修剤には、塩害・中性化対策だけでなく、ASR対策としても有効に作用するコンクリート用補修剤として今後の適用拡大が期待されている亜硝酸リチウム40%水溶液(以下、LN40)を使用した。補修時の使用形態(補修方法)として、本研究では実構造物への適用実績を勘案し、LN40の直接塗布による表面被覆、LN40を添加したポリマーセメントペーストによる表面被覆、LN40を添加したポリマーセメントモルタルによる表面被覆、LN40の直接塗布後にポリマーセメントモルタルによる表面被覆の計4種類の補修方法について検討した。暴露実験には、本研究にて提案する溶出試験装置を用い、補修を施したコンクリート供試体を北見工業大学構内の屋外環境下に設置し、降雨時に補修面から流出した雨水を回収後、イオンクロマトグラフィーにより亜硝酸イオン量を測定した。
その結果、LN40の直接塗布による表面被覆を施した場合に亜硝酸イオンの溶脱量が最も多くなった。これに対して、LN40をポリマーセメントペーストあるいはモルタルに添加する、あるいはLN40を直接塗布後にポリマーセメントモルタルで被覆する方法では、亜硝酸イオンの溶脱量が抑制される結果となった。また、水質汚濁防止法の排出基準との関係を見ると、各補修方法で溶脱量は異なるものの、全ての補修方法において各サイクルの亜硝酸イオン濃度は水質汚濁防止法の排出基準で規定されている329ppmより小さな値を示すことを確認した。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究初年度は、コンクリート補修面からの亜硝酸イオンの溶脱量を測定するための試験装置の構築を行い、当初計画した各種補修方法毎に亜硝酸イオンの溶脱量に関するデータを抽出することができた。概ね想定した実験結果が得られており、補修面からの亜硝酸イオンの溶脱を抑制するための方策を考案するに有益な知見が得られた。また、環境庁が定める亜硝酸イオンの排出基準と関係においても、規定値を下回る結果が得られており、施工後の補修効果や安全性を保証するに有用なデータが得られたと考えている。
一方で、今回の実験では、試験装置および供試体サイズなどの制約条件から溶出側のみの評価となっており、亜硝酸イオンがコンクリート補修面側に浸透した量や補修材内に残存している量までを同定するには至っていない。しかし、溶出および浸透量を並行して測定するための試験装置の製作を終えており、次年度以降に実験を遂行することで亜硝酸イオンの収支(溶脱量、補修面への浸透量、補修剤内の残存量の関係)の観点から、亜硝酸イオンの溶脱量の評価を試みる予定である。以上が、研究の達成度を「おおむね順調に進展している」と評価した理由である。

Strategy for Future Research Activity

平成28年度は、平成27年度の屋外暴露実験に用いた実験装置および亜硝酸イオンの浸透量測定用実験装置を用いて室内での模擬降雨実験を行う。具体的には、補修面に対して実環境における気象データを基づいた様々な降雨形態を模擬した散水と乾燥の乾湿サイクルを作用させ、散水時に補修面から流出した回収水に含まれる亜硝酸イオンの溶脱量および補修したコンクリート内に浸透したイオン量、補修材に残存するイオン量を測定することで、亜硝酸イオンの収支を明らかにする。また、屋外暴露実験結果との比較検討を行うことにより、本研究で開発する試験装置および溶出試験方法の実用性と信頼性を検証する。

Causes of Carryover

亜硝酸イオン量を測定するイオンクロマトグラフィに必要となる消耗備品の購入を考えていたが、残額が少額のため購入を取り止めたことによる。

Expenditure Plan for Carryover Budget

次年度研究費と合算して、当初予定していたイオンクロマトグラフィ用の消耗備品の購入に当てたいと考えている。