2015 Fiscal Year Research-status Report
ASRによる材料劣化および鋼材拘束がPC梁性能低下に及ぼす原因の要因解明について
Project/Area Number |
15K18101
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 大介 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 技術職員 (40398095)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ASR / 材料劣化 / 性能低下 / 拘束条件 / 力学的性能低下 / 耐久性能 / 耐荷性能 |
Outline of Annual Research Achievements |
ASRを生じたコンクリート構造物には亀甲状あるいは軸方向のひび割れが発生する。補修や補強を行う場合には,ひび割れが生じたコンクリートの耐荷性状の評価が必要である。しかしながら,ASRを生じたコンクリートの力学的性質に関する知見は不足しているのが現状である。初年度は,ASRにより生じたひび割れがコンクリートの力学的性質に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,圧縮強度,静弾性係数等の各力学的性質と内部ひび割れとの関係性を実験的に考察した。 W/C=40%,およびW/C=50%のコンクリートで実験を行った結果,強度レベルが相違していても,ASR膨張に伴う圧縮強度および弾性係数の低下傾向はほぼ同等となることが分かった。また,ASRを生じさせたコンクリートの圧縮強度試験を行った結果,ASR膨張によって生じた水平方向と斜め方向ひび割れに大きな縦ひずみが確認できた。これより,載荷によってこれらのひび割れが閉じたため,それに伴い変形量が大きくなり,静弾性係数が低下することが確認された。 なお,初年度はアルカリシリカ反応(ASR)を生じたコンクリートの力学的性状変化を明確にするため,鉄筋を含まないコンクリート供試体のASR膨張に伴う性状変化について検討を行った。2年目は,初年度の結果をベースにPCにて拘束されたコンクリートのASR膨張に伴う耐久性,耐荷性の変化を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画では実験A,実験B,実験Cを提案していた。実験Aでは無拘束条件でコンクリートにASRが進展した場合の力学的性能の変化を実験的に明確にすることを提案した。実験Bではプレストレスによる拘束条件下でASRが進展した場合のひび割れ進展の特性について検討することを提案した。実験Cではポストテンション型小型プレストレストコンクリートの耐荷性能について,ASR膨張の進展に伴う載荷性能について検討を行う実験を提案した。 初年度の成果により,実験Aについて完了することができ,その結果,無筋コンクリートの場合の,ASR進展に伴う材料劣化(膨張量に伴う内部ひび割れ進展,諸力学的性能)を明確化することができた。なお,実験Bについても現在進行中であり,2年目の中盤には実験結果を公表することができると予想している。 実験Cについては,現段階で準備中ではあるものの,初年度の知見を基にその準備はほぼ整い,実験作業を開始する予定である。また使用骨材の特性から,2年目の後半には十分なASR膨張が見込まれているため,これについても予定通り実験を遂行することができると予想してる。 なお,プレストレストコンクリートのASR劣化を考慮するとき,コンクリートのクリープとASR膨張を切り離して考えることはできないので,2年目の計画では,当初計画していなかった,クリープ平衡したコンクリートにASRが生じた時のひび割れ進展および膨張挙動も併せて検討することを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
PC(プレストレストコンクリート)のASR膨張に伴う耐力,耐久性の変化について評価する項目は,拘束によるひび割れの方向性,び割れ量やひび割れ幅の増大に伴う水分供給(表面ひび割れを沿って)の変化と,それによるASR膨張の促進具合,およびASRが生じたコンクリートの水の拡散係数である。そのためにPC供試体を持ちいて確認する事項は,応力状態の変化,水分供給の変化,ひび割れ幅の変化,膨張量経時変化(軸方向および軸直角方向),曲げ耐力である。 実験内容は以下の通りとする。供試体寸法は,210*110*750mm。無筋,PC供試体を作製。水分供給は下面湿潤上面乾燥,上下面湿潤の2パターンとする。内部のひずみをみる為に埋め込みゲージ,また湿度計でコンクリート内部湿度を測定。軸方向および軸直角方向の表面膨張量はコンタクトゲージにて計測。膨張量が0 ,500,1000,1500,2000,3000μの時に供試体を切断し,内部ひび割れ発生状況を確認。プレストレス力の変化はPC棒鋼のひずみ量にて管理。ケミカルプレストレスやクリープ変形などによるプレストレス量変化はブランク供試体を用いて評価(ASR膨張させない試験体)。ブランク供試体は,各温度湿度環境にて必要。埋込ゲージにて内部ひずみ変化を観測し,PCの全断面有効がASR膨張後に如何に変化するかを確認。予備試験では2年目の終わり頃には膨張量3000μ程度まで進む予定であり,実験Cについては予定通り完了できる見込みである。 追加実験であるクリープ試験では,連続的に弾性範囲で圧縮応力が作用した状態でクリープが終息した後にASRが発生した場合の,コンクリートの挙動(内部応力変化,クリープ,膨張挙動,変形性状)を明らかにする。予想として,通常クリープが平衡した後でさえも,ASR膨張が進むと再度クリープ変形が生じ,同時にASRによる変形も生じると思われる。
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Research Products
(7 results)