2015 Fiscal Year Research-status Report
統一評価理論に基づく洪水および地震ハザードを考慮した河川堤防の総合的な信頼性解析
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15K18112
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大竹 雄 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90598822)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 河川堤防 / 信頼性解析 / パイピング / 信頼性更新 / ベイズ統計学 / リスクコミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,洪水および地震ハザードを考慮した総合的な河川堤防の信頼性解析方法の開発を統一的理論に基づいて構築することを目指している. 初年度である昨年度は,オランダ国にて,河川堤防の信頼性解析における現状と課題について情報収集を行った.オランダDeltaresにて,河川堤防の信頼性評価,リスク評価を実際に行っている研究グループとミーティングを行った.最も興味深かったのは,本国で近年問題となっているパイピング破壊の問題に対する照査方法と河川堤防のリスクの公表の仕方(リスクコミュニケーション)の現状である. 前者では,Uplift,Heave,Pipingの3種類の性能関数の並列システムとして評価する方法を採用している.また,研究レベルであるが,地盤調査方法だけでなく,河川堤防の変状やガマ(粒子の移動を伴う漏水)の発生等の変状から地盤パラメータを逆算する方法を提案している.広域に広がる線状構造物である河川堤防において,全ての地点において詳細な調査を行うことは困難である.調査のみではなく,洪水時の変状も活用して危険箇所を抽出することができる可能性を確認した.最後に,高水時にガマ(粒子の移動をともなる漏水)が発生した本国一級河川堤防に適用して,その有効性を検証した.本国の洪水対策に対して有効なモデルが構築できる可能性を確認している.今後も継続的に取り組む予定である. リスクコミュニケーションの視点では,信頼性解析結果の活用方法の視点で重要な情報を得た.今後は,これまでの研究成果も踏まえて,洪水・地震両面から統一的に評価できる信頼性解析モデルの構築と実河川堤防への適用,そして,それを如何に市民に伝えるのか,という視点に立ち,リスクコミュニケーションの方法についても研究を進めていきたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
オランダ国への調査は,予想以上に多くの貴重な情報を得ることができた. 本国の河川堤防に適した信頼性解析の構築の方向性を明確にすることができた. 本助成金を活用し,オランダ国と継続的に情報交換をおこない,有効なモデルの構築とその使い方,手順を示すことを目標にしていきたい.
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Strategy for Future Research Activity |
オランダ国との情報交換を継続するとともに,本国の実河川堤防の地盤調査や洪水時の変状の情報をデータベース化して,実データに基づいて事例研究により,実用的なモデルの構築を目指す予定である. 今後の研究課題としては,統一的な評価理論に基づいて,広域に広がる河川堤防の信頼性を,横断,縦断方向に更新していくことになる.その基礎となるのは,ベイズ統計学であると考えられる.空間的補間法であるKriging法は,ベイズ統計学から解釈することができるので,ベイズ更新理論に基づいて,地盤調査や洪水時の変状の情報から,危険箇所を絞り込むための方法論を開発する. 加えて,外力ハザードの不確実性を考慮することにより,超過確率に意味を持たせ,リスク評価,リスクコミュニケーションへつなげるための基本的な信頼性解析体系を構築していきたい.
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