2015 Fiscal Year Research-status Report
砂州植生域における砂・粒状有機物の堆積とその分解過程を考慮した土壌環境の形成機構
Project/Area Number |
15K18121
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
尾花 まき子 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10447831)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 砂州 / 土壌環境 / 砂・粒状有機物 / 堆積機構 / 分解過程 / 水路実験 / 現地観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,河道内砂州植生域が,洪水流により運搬されてきた砂や粒状有機物を捕捉する現象に着目し,①それらの堆積機構をモデリングすること,②粒状有機物(植生種子,落葉,落枝等,以下POMと記載)が堆積した後に砂州植生の栄養分となるに至るその分解過程を把握することを目的としている.研究は,(1)洪水による砂・POM堆積特性変化の現地観測と年スケールでのPOM分解の現地実験,(2)植生域縦断方向での掃流砂・粒径別POMの堆積機構の水理実験,(3)水理モデルと連携させた粒径別POM輸送モデルとその分解モデルの構築,に分割して実施しており,本年度は主に(1)と(2)を中心に展開した. (1)については,植生域での細砂やPOMの堆積が十分に調査可能な砂州を選定し,洪水前後での地形測量を行った後,対照区での砂州土壌粒度,土壌中含有粒状有機物・栄養塩量の調査を同時に実施し,洪水による植生域内での細砂・POMの堆積変化量を把握した.有機物の分解に関する現地実験は,リターバッグ法を用いて行った.ツルヨシを対象に,その葉をリターバッグに封入し,各々のポイントでの地表から10cm下にそれらを埋設した.1年間を通して,2か月おきに計6回リターバッグ重量を計測し,有機物分解速度を算出し,場の条件に応じた分解速度の違いが把握された.(1)で得られた観測地形や植生条件に基づき,名古屋大学内の実験水路にて,単純化した条件下での移動床水路実験(2)を実施した.実験で扱うPOMモデルは比重調整が可能であるPVC(塩化ビニル)を選定した.植生域での細砂・POMの輸送・堆積についての運動機構を観察し,植生域での土砂堆積量やPOM捕捉率,またPOMは土砂との相互干渉作用により堆積することが明らかにされた.以上から,次年度の堆積・分解機構のモデル化に必要となる情報は得られたといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画として初年度に実施する予定であった,実河川での砂・粒状有機物の堆積特性や分解過程に関する現地観測およびその運動機構に関する水路実験について,順調に成果が上がっており,おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として,平成27年度に得られた現地観測データや実験から抽出された運動機構の特徴に基づいて,植生域における掃流砂の影響を考慮したPOMの捕捉モデルとPOM分解モデルを構築する予定である.なお,平成28年度の研究の重心は,上記に述べた数値解析モデルの構築におかれるが,(1)の有機物分解の現地実験に関しては,引き続き調査を継続する.
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Causes of Carryover |
初年度計画時に中国・北京での国際会議にて成果発表を予定していたが,情勢が不安定となったことから渡航を取りやめたため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現地観測に必要な消耗品費,成果発表や観測の旅費,観測補助費を予定している.
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