2015 Fiscal Year Research-status Report
河口干潟のヘドロ化機構の解明とヘドロ化抑制手法への応用
Project/Area Number |
15K18124
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中下 慎也 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90613034)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヘドロ / 限界せん断応力 / 陽イオン交換 / 有機物量 / 液性限界試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
都市河川では有機泥が過剰に堆積し,底質が還元化することによってヘドロ化が進行し問題となっている.本研究の目的はヘドロの流動性を変化させ,底質の還元状態を改善する新たなヘドロ化抑制手法を開発することである.具体的には,土粒子に吸着する陽イオンの種類や濃度,有機物の付着量を変化させた場合の有機泥の流動性や還元状態の改善効果を明らかにする. 1年目は土粒子や有機泥に吸着する陽イオンの効果に着目し室内実験を実施した.これまで有機泥を対象として泥に吸着する陽イオンを測定した例はほとんど無かったため,土壌の陽イオン交換容量試験に基づいて泥に吸着する陽イオンを測定する手法を確立した.測定結果より,有機泥に吸着する陽イオンは主に海水中の主要な陽イオンであるCa,Na,K,Mgであり,場所ごとに付着量の違いがあることが明らかとなった.続いて陽イオンの吸着による有機泥の流動性の変化を検討するため,有機泥に吸着するイオンを強制的に9割以上Caに置換させ,液性限界試験を実施した.実験結果より,吸着するイオンがCaに変化することで液性限界値が20%以上増加することが明らかとなった. 本研究結果はこれまで物理的な要因のみが考えられていた泥の巻き上がりのパラメータである限界せん断応力が電気化学的な要因によっても変化することを示す重要な結果である.今後この考え方を用いることによりこれまで解明できなかった現象についても再現することが可能になると予想される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目で予定していた項目は,1.実験に使用する有機泥の採取と流動性,還元状態の測定,2.陽イオン交換した粘土鉱物,有機泥の流動性と還元状態の測定の2つであった.有機泥の採取と性状の測定は問題無く完了したが,泥に吸着する陽イオンを測定する手法は確立されていなかったため,試行錯誤を繰り返しながら実験方法を確立した.強制的に陽イオン交換させた粘土鉱物や有機泥の流動性を液性限界試験によって検討したが,液性限界試験の前処理に風乾試料が必要であり,高含水比の試料を風乾状態にするために1週間以上時間を必要とすることから,液性限界試験は予定よりも実施回数が少なくなっている.しかしながら,吸着するイオンが変化することによる有機泥の流動性の変化は確認されており,研究はおおむね順調に進んでいるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目に実施予定の項目は,3.有機物の付着量に伴う陽イオン交換量と有機泥の流動性と還元状態の変化,4.CaOなどを溶出する造粒物を用いた陽イオン交換による有機泥の流動性と還元状態の改善効果の解明の2つである.有機物量の異なる試料は過酸化水素水の添加量を10,25,50 mL/g-dryと変化させて作成する予定である.1年目に提案した有機泥に吸着する陽イオン量の測定手法を用いて有機物量が変化した場合の有機泥に吸着する陽イオン量の変化を明らかにするとともに,液性限界試験の結果についても比較を行う. 今後本研究結果を現地に適用させるにあたり,CaOを溶出し,Caを供給できる石炭灰造粒物やスラグを混合させることで実環境においても同様の効果が得られるかを確認する.さらに,造粒物の混合だけでなく,造粒物から供給される高濃度の陽イオン溶液を混合させる方法なども検討し,効果的な改善手法を提案する.
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