2016 Fiscal Year Research-status Report
複数衛星系を用いた高精度測位のための誤差電波検知による衛星選択手法の構築
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15K18139
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
池田 隆博 日本大学, 理工学部, 助教 (60733227)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 衛星測位 / GPS / GLONASS / QZSS / Galileo / マルチパス / 信号強度 / 搬送波位相 |
Outline of Annual Research Achievements |
衛星測位はGPS、GLONASS、QZSS、Galileoの複数のシステムの運用により、上空視界の悪い都市部等においても観測可能な衛星数が増加傾向にある。このため、回折波や反射波によるマルチパスの影響を受ける衛星の除去を行っても、衛星測位の実施が可能になりつつあり、今後、該当する衛星を除去する手法の有効性はより高まるものと考えられる。昨年度は、受信機間の信号強度の差および周波数の異なる2種類の搬送波位相の変化量の差を指標としたマルチパス検知手法について検討を行い、不可視衛星からの回折波の影響を受ける衛星の判別が可能であることを確認した。今年度は、検討したマルチパス検知手法を使用し下記の内容を実施した。 1 搬送波位相の変化量の差による指標の基準値の設定 昨年度の検討結果より、搬送波位相の変化量の差による指標ついて、組合せた衛星電波の種類および衛星仰角によって指標値の傾向が異なる結果が得られた。よって、周囲に遮蔽物のない2つの観測点に受信機を設置して観測値を取得し、マルチパスの影響を受けない場合の指標値の傾向を衛星電波の組合せ別に算出し、マルチパスの有無を判別する基準値を算出した。 2 マルチパスの影響を受ける衛星の除去効果に関する検証 受信機間の信号強度の差と搬送波位相の変化量の差による指標ついて、マルチパスの影響を受ける衛星の判別手法として使用した場合の効果を検証するため、静止時と移動時において、周囲に遮蔽物のない観測点と周囲に遮蔽物が存在する地点で各衛星の観測値を同時取得した。取得した観測値より、衛星毎のマルチパスの影響の有無を指標別に算出し、該当する衛星を排除して測位計算を実施した結果、衛星排除前と比較し静止時と移動時ともにFix解の取得率が増加する傾向が見られた。また、静止時においては、受信機を設置した地点を中心とするFix解の分布についても小さくなる傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
周囲に遮蔽物が点在する地点で静止測位と移動測位を実施し、得られた観測値に対して信号強度の差と周波数の異なる2種類の搬送波位相の変化量の差によるマルチパス検知手法を適用した結果、誤差の有無を判別する基準値を設定して衛星を排除することで、衛星排除前と比較しFix解の取得率、および取得したFix解の精度が向上することを確認した。また、搬送波位相の変化量の差による手法では、可視衛星からの反射波の影響を受ける衛星の判別についても可能であることを確認した。よって、本手法は測位計算時に衛星を選択する場合、考慮すべき指標になるといえる。 今年度の課題としては、搬送波位相の変化量の差によるマルチパス検知手法において、不可視直後の衛星の検知率の向上が挙げられる。搬送波位相の変化量の差による手法において、組合せた双方の搬送波位相のマルチパスの影響が同じ場合、変化量が同一となり、マルチパスの影響を受けない場合と同じ指標値が算出される。そのため、一定時間取得した指標値の傾向について確認が必要となり、エポック数が不足または過剰な場合、移動測位時において瞬時に不可視となった衛星に対しては検知が不完全となる場合がある。なお、信号強度の差による手法では、搬送波位相の変化量の差による手法と比較し、不可視衛星の検知率が高くなる傾向が見られたが、伝搬経路上の周囲に遮蔽物が複数存在する場合、可視衛星であるにも関わらず指標値が不可視衛星と判断する基準に達してしまい、マルチパスの影響を受けない衛星を排除対象とする場合が見られた。よって、不可視衛星の検知率を向上させるため、搬送波位相の変化量の差により得られる指標において、組合せた衛星電波の種類に応じて適切なエポック数を用いて衛星を判別する手法が必要であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1 不可視直後の衛星判別に関する検討 搬送波位相の変化量の差によるマルチパス検知手法において、不可視直後の衛星の検知率の向上方法について検討する。具体的には、周囲に遮蔽物のない2つの観測点で得られた観測値より指標値を算出し、組合わせた衛星電波の種類毎に正規分布となるエポック数を求める。次に、予めレーザースキャナで周囲の地物を点群データでモデル化した地点と遮蔽物を含まない観測点で静止時と移動時で同時取得した観測値より指標値を算出し、不可視直後の衛星を指標値から判別可能か検討する。 2 移動測位時における走行コース周囲の遮蔽物のモデル化 移動測位によるマルチパスの影響を受ける衛星の除去効果に関する検証は今年度実施したが、走行コース周囲の遮蔽物のモデルは無く、得られた指標値のみで検証を行ったため、実際に観測された衛星の遮蔽状況が不明であった。よって、上記の検討を行うにあたり、衛星の可視状況を確認するため、走行コース周囲の電波遮蔽物となる建物・樹木を3次元点群データとして取得する。得られたデータと指標値を比較し、移動時においても不可視直後の衛星を判別可能か検討する。
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Causes of Carryover |
昨年度はTrimble社の受信機を使用してマルチパス検知手法の検討を行ったが、他のメーカー製の受信機でも同じ結果が得られるか不明であったため、今年度はGPS、GLONASS、QZSS、Galileoの各衛星電波に対応したJAVAD社の受信機をレンタルした。しかし、レンタルを行うにあたり想定した金額を下回ったため、レンタル費用について余りが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在まで実施した検証では、静止時で得られた成果を移動時にも同様に適用しており、移動時のマルチパス検知手法の適用においてFix解の取得率の向上が見られる成果は得られたが、一方で、静止時と移動時で信号強度の差と搬送波位相の変化量の差による指標値について同様の傾向が得られるか検証は行われていない。そこで、次年度は移動時の観測値を取得する際に、車両に設置する受信機1台に加え周囲に遮蔽物のない環境下に2台の受信機を設置し、同時間帯で静止時と移動時による検証を実施するため、JAVAD社の受信機を3台レンタルする計画である。
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