2015 Fiscal Year Research-status Report
群体形成と浮揚性の制御を活用したアオコ除去技術の研究開発
Project/Area Number |
15K18142
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
天野 佳正 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40517976)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アオコ捕集除去 / ミクロキスティス / 細胞外多糖類(EPS) / カチオン / 群体形成 / 浮揚性 / 水環境保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は,水道水源に発生する有毒な藍藻類 (アオコ)が有する粘質性の細胞外多糖類 (Extracellular Polymeric Substances; EPS)を利用し,群体形成を鍵とする高分散性のアオコ形成種ミクロキスティスの捕集除去手法の開発を目的としている。 夏季の富栄養湖沼にて採取したミクロキスティス(群体形成株)を主とするアオコからEPSを単離した結果,分散性の高いミクロキスティスと比較してより多くのEPSの単離が可能であった。このことから,ミクロキスティスの群体形成にはEPSが強く関与していることが確認された。 高分散性のミクロキスティス培地に単離したEPSを添加して群体形成を試みたところ,EPSのみではミクロキスティスは群体を形成しないことが見い出された。また,ミクロキスティスの群体形成には高濃度のカチオン(Ca(II): 1000 mg/L)が必要であり,さらにEPSとCa(II)イオンをそれぞれ200 mg/Lおよび1000 mg/Lとなるよう同時に添加することで,ミクロキスティスの群体形成は著しく促進され,群体のサイズも拡大することを明らかにした。 以上のように,EPSとカチオン濃度の制御による高分散性ミクロキスティスの群体形成に基づく捕集技術開発を行った。今後,ミクロキスティスの群体形成に影響を及ぼすカチオン種や生育環境因子の検討を加え,効率的にミクロキスティスを捕集できる技術開発へと展開する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究では,(1)富栄養湖沼に発生したアオコからのEPSの単離,(2)高分散性のミクロキスティスを含む水溶液中のEPS濃度の精密制御,による,群体形成を鍵とするミクロキスティスの捕集除去手法の確立を目指している。 現在までの進捗状況は,(1)に関しては,従来のEDTA-NaOH混合溶液によるEPS抽出法に加え,NaClを用いた新たな抽出法についても試みており,これらの異なる方法にて得られたEPSがミクロキスティスの群体形成に及ぼす影響について検討しているところである。また(2)については,ミクロキスティスの群体形成にはEPSに加えてCa(II)イオンが必要であることを明らかにしているが,さらに他のカチオン種としてMg(II)イオンについての検討も進めているところであり,Mg(II)イオンが共存することによって,EPSとCa(II)イオンの添加量を大幅に低減できる可能性を見出している。 これらの成果は,学術論文や学会発表を通じて広く社会に情報発信している。また昨年度は,当研究室の大学院生を2ヶ月間,テネシー工科大学(米国)に派遣して研究の充実を図った。以上のことから,これまでの本申請研究の達成度は,一定のレベルに達しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年に引き続き,高分散性ミクロキスティスの捕集除去手法の開発を目指す。現在までの進捗状況において述べた通り,ミクロキスティスの群体形成においてEPSとCa(II)イオンが重要な役割を示していることを明らかにしたが,これらの成分とともにMg(II)イオンが共存することによって,ミクロキスティスの群体形成に必要なEPSとCa(II)イオン濃度を著しく低減できる可能性をこれまでに見出している。このため,これらの相互作用について更なる検討を加えていく予定である。また,ミクロキスティス細胞の比重は,光合成で得られた炭水化物を消費する夜間 (暗条件)において小さくなることがわかっている。ミクロキスティスの群体形成を促し,群体サイズを拡張できれば浮揚性をも高めることができ(ストークスの法則),効果的な捕集除去手法となりうる。このため,群体形成に及ぼす光条件(明暗条件)についての検討も行う計画である。
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Research Products
(5 results)