2015 Fiscal Year Research-status Report
都市沿岸域に存在する人工湿地のCO2収支における基礎生産者の寄与の定量評価
Project/Area Number |
15K18145
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
遠藤 徹 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 講師 (00527773)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 人工塩性湿地 / CO2収支 / CO2フラックス / 都市沿岸域 / 光合成 / 呼吸 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、温室効果ガス削減の切り口として、海洋生態系によるCO2の吸収・固定機能(ブルーカーボン)が注目されていおり、沿岸域の炭素循環機構の解明が望まれている。その中でも、都市沿岸域は人間活動の影響を強く受けるとともに豊かな生態系が形成されるため、炭素循環が活発な場であると考えられる。本研究課題は、都市沿岸域に造成された人工塩性湿地を対象に、基礎生産者のCO2吸収・固定能が湿地のCO2収支にどれほど寄与しているのかを評価するものである。 3年計画の初年度は、湿地全体の見かけのCO2収支を把握するため、大阪市の港湾海域に造成された大阪南港野鳥園北池において、1:干潟干出面、海水面におけるCO2フラックスの24時間四季調査、2:干潟干出面および海水面の表面積評価のための地形測量、3:潮汐により変化する干潟干出面および海水面の表面積とフラックスの日変動を考慮した湿地全体のCO2収支の評価、を行った。 その結果、干潟干出面のCO2フラックスの変動量は海水面のフラックスよりも1オーダー大きく、堆積物表層の底生微細藻類の光合成により日照時に多くのCO2を吸収していることが明らかとなった。また、各フラックスと環境因子との関係を整理したところ、干潟干出部の呼吸量は泥温で、また、吸収量は光量子量と泥温で定式化が可能であることが示唆された。一方、海水面フラックスは測定した環境因子(水温、塩分、水中クロロフィルの蛍光強度、DO濃度)とは相関がみられなかった。 また、地形測量と水深測量により作成した湿地の等高線図を基に、潮汐により時間的に変動する干潟干出部と海水面の表面積と、上記のCO2フラックスの日変動を考慮して、野鳥園北池全体の収支を計算した。その結果、季節によって吸収量に違いはあるが、全調査日において野鳥園はCO2の吸収源であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の申請時の計画は、都市沿岸域の人工湿地のCO2収支における基礎生産者の寄与を評価するために、年度ごとに課題を設定し3年計画で実施するものである。1年目は湿地の見かけのCO2収支の推定、2年目は基礎生産者の現存量と海底堆積有機物濃度の空間分布特性の把握、3年目は基礎生産者のCO2吸収特性の定量評価、である。初年度は、研究実績の概要の報告のとおり、当該湿地で季節毎に干潟干出面、海水面のCO2フラックス調査をを実施し、1日当たりの干潟全体のCO2収支を見積もった。このため、当初予定していた計画通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の研究計画通り、2年目では、基礎生産者である植物プランクトンと底生微細藻類の現存量の把握と海底堆積有機物の空間分布特性について検討する。基礎生産者の現存量把握と堆積物調査は1年目よりすでに実施しており、この調査を継続し、年間の分布特性の変化を明らかにする。 また、3年目に実施予定の基礎生産者のCO2の吸収速度の測定についても予備実験を実施しており、当初計画以上の進捗が期待できる。このため、目標を少し発展させ、最終的には植物プランクトンの枯死によるCO2の回帰について検討を試みる予定である。
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