2015 Fiscal Year Annual Research Report
X線回折を利用したPDF解析によるセメント硬化体のナノ構造変形挙動の解明
Project/Area Number |
15K18160
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
BAE SUNGCHUL 東京理科大学, 理工学部, 助教 (30751630)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | PDF / セメント / ナノ構造 / 変形 / C-S-H |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的に、セメント硬化体は、カルシウムシリケート(CSH)、水酸化カルシウム(CH)、AFt及びAFm相や未水和反応セメント鉱物で構成される。その中でも全体の50%近くを占めるCSH相は、セメント硬化体あるいはコンクリートの強度発現および変形挙動においても最も重要なファクターであると考えられている。そのため、その構造や変形挙動の解明を目的とした研究が活発に行われ、メソ・ミクロレベルからナノレベルまで様々なCSH構造モデルが提案されてきた。CSH相はセメント硬化体中の他の相に比べ、低結晶質物質であるため、天然CSH鉱物及びCHの結晶構造をベースにした混合構造モデル[1, 2]や、モンテカルロ法や分子動力学を活用した原子レベルの構造モデル[3]などが提案されているが、未だCSHの性質、構造および変形挙動については不明な点が多い。また、CSH相の物理化学物性に大きな影響を与える様々な環境や劣化要因がCSH相の変形挙動へ与える影響は検討されていない。特に、CSH相の変形挙動を効果的に評価できる手段がなく、セメント硬化体の変形メカニズムは未だに明らかにされてない。 このような背景の中、申請者は、2015年にSpring8のX線回折を利用し原子対相関関数(PDF)解析法により、セメントクリンカー硬化体のナノ構造に生じるひずみの評価を試みた。PDF解析法は原子対相関関数を測定することにより、結晶周期性をもたない物質の局所構造を定量的に評価できる手法で、この試行実験により、セメント硬化体から得られた回折ピークの位置変化から、圧縮負荷に伴うセメント硬化体内部の結晶相であるCH相の弾性ひずみ変化を定量的に評価できることが分かった。
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