2015 Fiscal Year Research-status Report
調湿機能を向上させた火山灰材料の開発と吹付け建材への応用
Project/Area Number |
15K18162
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Research Institution | DAIICHI UNIVERSITY OF TECHNOLOGY |
Principal Investigator |
位田 達哉 第一工業大学, 工学部, 講師 (40434279)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 火山灰 / 多孔質材料 / 調湿 / 吸放湿性 / 湿式吹付け |
Outline of Annual Research Achievements |
日本は世界有数の火山国であるが,特に,桜島は日常的に噴火を伴う火山活動を続けており,2014年度の降灰量は年間およそ330万tもの量を記録している。火山噴出物の有効利用についての検討は,火砕流堆積物の総称であるシラスについての研究が主であり,桜島で日常的に発生している火山灰についての検討は,十分な議論のないまま今日に至っている。また,我が国は高温多湿・低温乾燥の気候地域であり,室内環境においては空調機器に依存する状況となって久しい。地球規模での省エネルギー推進の気運が高まるなか,高断熱・高気密の追求によって健康障害が顕在化しているが,パッシブな調湿機能を有する建材を用いることによって,自然に近い環境で室内空気質を向上できるものと考えられる。すなわち,廃棄物として処理されている火山灰を調湿機能建材として再生することによって,地球環境の観点から環境負荷を低減させるだけでなく,居住者のQOL向上にも寄与できるものと考えられる。 本研究では,火山灰が多孔質構造を有することに着目し,調湿建材としての実用化を目的としている。素材の調湿機能を損なわない工法として湿式吹き付けを採用し,低負荷かつ快適な室内空間を達成する内装建材を実現するための検討をおこなっている。 本年度においては,火山灰の湿式吹付け材としての適用可能性を評価するため,水結合材比と火山灰量を水準とした湿式吹付け材の施工性を評価するとともに,代表的な調合について吸放湿性を評価した。その結果,水結合材比1~4の範囲で,水:火山灰=1:4(体積比)かつ,JASS 15 M-103フロー:70mm~90mmを満たす調合が最適であることがわかった。また,吹付け試験片の吸放湿性は,水結合材比が低く,厚みがあるほど向上し,調湿性能評価基準を満足する試験片もあり,調湿建材として十分な性能が期待できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,火山灰そのものだけでも十分に調湿性能を有すると判断したため,火山灰の湿式吹付け材としての施工方法の検討を中心におこなった。その過程で製造した試験片についての調湿性能(調湿力および平衡含水率)は現在も測定中であり,当初の研究計画以上に進展している。 その一方で,調湿性能の高性能化を図るためにも,火山灰そのものの多孔質構造の発達については検討の余地を残しており,全体としての進捗具合は5割程度と判断する。
最終年度である平成28年度は,火山灰そのものの多孔質化について更なる検討を加えるとともに,それらを吹付け建材をして用いた場合の調湿性能の向上について検討する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,火山灰の多孔質構造の発達を目的として,比表面積に及ぼす薬品浸漬や加熱の影響について詳しく調査する。また,前年度に引き続き,火山灰を用いた湿式吹付け試験片の調湿力および平衡含水率を測定し,全体としての調湿効果の評価を計画している。 また,研究実施の最終年度として,研究成果のとりまとめを実施する。
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