2015 Fiscal Year Research-status Report
波動数値シミュレータによる次世代吸音構造を有する建築の音響設計手法の開発
Project/Area Number |
15K18167
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
奥園 健 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40727707)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 室内音響 / 吸音材料 / 波動数値解析 / 有限要素法 / 微細穿孔板 / 通気性膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高信頼性を有する波動音響数値解析を駆使し、微細穿孔板(MPP)と通気性膜を用いた次世代吸音体を有する建築の音環境予測技術を構築するとともに、室内音響設計指針の確立を目指すものである。平成27年度は、有限要素法(FEM)を用いて、本研究の技術的基盤となる音環境予測技術の開発に取り組んだ。得られた成果は以下の通りである。
1.通気性膜吸音体を設置した室内音場予測のための時間領域有限要素法の開発に成功した。音響管法を模擬した数値実験により妥当性を示すとともに、膜の物性値の広範な変化に対して、時間領域解析で問題となる安定性に関しても問題ないことを確認した。さらに、2重通気性膜空間吸音体を設置した大規模2次元室内音場の予測を通して、高効率な解析が可能であることを示した。 2.吸音を有する室内音場予測のための安定的な陽的時間領域FEMを開発し、その特性(離散化誤差・安定性・計算効率)について詳細な評価を行った。当初開発した手法は、安定性が境界面のインピーダンス値に依存する問題点を有していたが、時間微分項への差分近似の工夫ならびに集中減衰行列の活用により、その克服に成功した。 3.MPP吸音体のモデル化に関して、MPP-空気層-剛壁からなる単一MPP吸音体においては、背後空気層内での音の伝搬の効果を無視することができず、拡張作用モデルによるモデル化が必要であることを明らかにした。また、MPP・通気性膜空間吸音体のモデル化に関して指針を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度の検討において、MPP・通気性膜吸音体を設置した室内音場の予測技術に関する基礎は構築できたものと考えている。特に、陽的な手法に関しては、当初想定していなかった問題に直面したものの、これを克服した新規な手法を構築できた。また、当初予定していなかったMPP・通気性膜を用いた空間吸音体のモデル化に関して進展があり、次年度における検討の礎を築くことができた。さらに研究成果として、2編の英文学術雑誌論文(Applied Acoustics, Acoustical Science and Technology)への掲載を達成した。ただし、次年度への課題として、現状、MPP・通気性膜の有限要素モデルが2次元モデルへと留まっているため、3次元モデルへの拡張が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果によって、次世代吸音体を設置した室内音場の2次元解析が可能となった。これを踏まえ、3次元解析技術の開発を進めるとともに、室内に設置した次世代吸音体の吸音効果について詳細な検討を行う予定である。また、開発したMPP・通気性FEモデルの妥当性を明らかにするため実測値との比較を行う。
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