2015 Fiscal Year Research-status Report
気候特性と歴史性を踏まえた都市温熱環境の予測評価手法の開発と建築教育への展開
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15K18168
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高田 真人 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (30581376)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地方中核都市 / 城下町 / 町割 / 温熱環境 / 気流解析 / 授業プログラム / 行政支援 / BIM |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度(H27年度)は,対象地である熊本市古町地区において屋外実測を実施し,夏季の温熱環境に関して詳細なデータを収録・分析した。これにより気流分布も含めて夏季における熊本市古町地区の温熱環境の実態を把握し,その空間構成が屋外の温熱環境に及ぼす影響を総合的に明らかにした。 具体的には,自転車実測と屋外の移動実測より,夏季晴天日(2015年8月10日)における対象地の温熱環境の日変化を把握した。実測項目は,昨年度(H26年度)の予備実測で測定した外気温・相対湿度・位置情報に加えて,生活空間での気流分布の把握を目的に風速・風向も測定した。更に数値シミュレーションより対象地の実測当日の表面温度分布を算出した上で,条件付きではあるが快適性指標を算出し,熱的特性を評価・考察した。 結果,旧町人地でありながら寺社地を内包する特徴的な空間構成を有する対象地熊本市古町地区では,寺社地と通常の空地とが組み合わさった広大な駐車場で熱せられた空気が,流入してくる風により移流して周囲の温熱環境に影響を及ぼすことが明らかとなった。これら一連の検討により,気温や表面温度だけでなく,気流に関しても古町地区独自の熱的特性が確認された。またこれにより次年度に熱と気流の連成解析を行う上で十分なデータが整った。 次年度(H28年度)以降の課題としては,対象地の気流環境を数値シミュレーションより詳細に解析し,分析する必要がある。 また本研究の成果は,日本建築学会・大会や同学会のバイオクライマティックデザイン小委員会等で報告するだけでなく,国際学会PLEA2015でも口答発表を行い,国内外に広く伝えるよう心掛けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象地の夏季の温熱環境を数値シミュレーションによる解析し,検証・考察する上で,実際の測定データが何よりも重要である。その点に関しては,本年度(H27年度)の実測により,対象地の温熱環境に関して今後2年間使用するに十分なデータを収録することができた。 更に,実測結果より特徴的な温熱環境を示した一部の街区に関しては,数値シミュレーションによる表面温度分布の算出ため,3D-CADモデルを作成しており,これらは次年度(H28年度)以降に続く気流解析でも使用可能である。しかし本研究の場合,表面温度分布の解析範囲よりも気流解析の範囲は広域となるため,次年度は新たに3D-CADモデル作成する必要がある。ただし表面温度分布を解析した範囲は,気流解析を行う範囲に含まれているため,気流解析のために必要なモデル数の1/3は既に作成されていると言える。 一方,最終的な提案に際しては,今回の熊本地震の影響を踏まえた提案も検討していく予定である。 また本年度中に,幕末期~明治期における古町地区の古写真や伝統的な町屋の造りに関する調査も一部行っており,調査すべき史料・資料の方向性に関してはある程度の目処がたっている。次年度はこの点に関する調査,そして数値シミュレーションによる解析に対応した当時の建物モデルの再現も進める予定である。 授業プログラムの開発に関しては,国際学会PLEA2016での発表が内定しており,また建築学会の査読付き論文も作成中であり、国内外に研究内容を精査・アピールするよう心掛けている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の対象地である熊本市古町地区は, 2016年4月14日及び16日に発生した熊本地震により多大な被害を受けた。地震による被害とそこからの復興,及び本研究期間が2018年3月までである点を考慮すると,今後現地での実測等は難しい。しかしながら,本研究の解析で必要とする実測データは,本年度(H27年度)の研究において温熱環境のみならず建物情報に関しても既に十分に得られている。また得られた研究結果を教材化して実践する教育機関(熊本大学)に関しても,多少の授業の遅れはみられるが,授業日数やそれ自体の減少や中止は行われないことが決定している。 したがって,本研究の基本方針(①対象地を数値シミュレーションより解析し,環境工学の視点だけでなく歴史及び都市計画の視点も踏まえた評価,②解析結果を建築学科の設計製図の教材に導入し,得られた知見の還元を計る)に関する変更は行わない。しかし細部に関しては,地震による影響を考慮する方向を模索する予定である。具体的には,対象地の評価に際し環境に配慮した都市のあり方の提示を行う予定であるが,その際,都市計画のみならず地震や防災面からの配慮も導入していきたい。 また当初の計画通り,次年度(H28年度)は本年度の実測データを元に,数値シミュレーションによる対象地の熱と気流の連成解析を実施する。また得られた知見の還元を目的に,建築学科の学生を対象とした授業プログラムの開発も同時並行で進めていく。 研究成果の発表に関しては,本年度の研究成果と次年度の成果をまとめ,次々年度(H29年度)に建築学会論文集に投稿する予定である。その前段階として,本年度の成果を査読付きの技術報告集に投稿すべく,現在作業中である。また関連して,授業プログラムの開発に関しては,次年度は国際学会PLEA2016での発表が決定している。
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Research Products
(5 results)