2016 Fiscal Year Research-status Report
「リビングアクセス型住宅」成立の境界条件確立に関する研究
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15K18173
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佃 悠 東北大学, 工学研究科, 助教 (90636002)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リビングアクセス / 集合住宅 / 棟配置 / アクセス方式 / 隣接関係 / フロンテージ / 開放度 / プライバシー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、主に三つの調査を行った。一つ目は、平成27年度に引き続いて、リビングアクセス型住戸の国内事例に対する図面分析である。アクセスと住戸の関係については前年度に分析をおこなったが、今年度は住戸内の室構成ごとのフロンテージとリビングの縦長比との関係を明らかにし、フロンテージによって可能なリビング・水周り・個室の配置が異なり、タイプごとにリビングの縦長比の閾値があること、フロンテージの限界値があることを確認した。 二つ目は、リビングアクセス型住戸と従来型住戸での居住実態調査である。両タイプの住宅が併置されており、平成27年に入居開始した宮城県石巻市の災害公営住宅455戸を対象として、アンケート調査を行った。調査により、リビングアクセス型住戸の約25%は日中カーテンをしないと答えており、また、約18%が自宅から声かけするなどして近隣住民と顔をあわせると答えていた。目視での外構調査から、共用部分との間のテラスに表出や洗濯物がある住戸は窓の開放度が高いことが確認されており、中間領域の利用状況が重要であることが示唆されている。さらに、ヒアリング調査を元に、住戸内の家具配置等空間構成に影響を受けた居住の実態について分析を行った。 三つ目に海外事例との比較調査として、中国上海での高齢者の居住実態調査を行った。今後国内の事例と合わせて分析を進める。 また、平成27年度の研究成果を元に、他住宅や被災地で参考可能な資料として「集合住宅の新しい文法―東日本大震災における災害公営住宅」をまとめ、広く知見を公表することに努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、空間構成の詳細な分析から、室構成ごとのフロンテージとリビングの縦長比との関係を明らかにし、リビングアクセス型住戸の設計に資する知見を示すことができた。さらに、居住実態調査によって従来型との比較を行うことでリビングアクセス型固有の特徴を明らかにしている。当初予定よりも災害公営住宅の完成や入居が遅れたため、調査方法や対象の変更をおこなったが、おおむね計画通りの成果を得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目は、東北の二自治体でリビングアクセス型住戸を取り入れた災害公営住宅(計約500戸)を対象に、アンケート調査およびヒアリング調査を行う予定である。すでに自治体等からの調査の協力を得ており、平成28年度の調査結果を元にしながら、詳細な調査内容を検討している。 また、平成28年度の調査から住戸と共用部の中間領域の構成が重要であることが示唆されたため、既存事例を元に中間領域の材料、構成部材、透過性等についてのより詳細な調査を行い、境界条件の分析を行っていく。 最終年度となるため、既存事例の調査および災害公営住宅での実態調査を統合し、リビングアクセス型住戸の体系的な知見となるよう、その実態と課題について整理する。学術論文などの社会への成果の公表方法についても検討を行いながら進めていく。
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Research Products
(3 results)