2015 Fiscal Year Research-status Report
障がい児者の防災対応能力向上に寄与するバリアフリーデザインの開発
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15K18180
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
藤井 容子 香川大学, 工学部, 助教 (00734188)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 視覚障がい者 / 特別支援学校 / 避難行動 / 防災対応能力 / 防災教育 / バリアフリーデザイン / ガイドロープ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、障がい児者の防災対応能力の向上を図るため、災害時・緊急時に対応した建築物の設計法・バリアフリーデザイン等に係る検討を進め、その成果をガイドラインとして公開し、全国の特別支援学校の避難対策の一助とするものである。 平成27年度は当初計画どおり下記のように研究を遂行した。 ■ステップ1.文献調査:障がい児者の避難時における課題と対策について検討するとともに、参考となる整備事例について、各種機関・政府資料および主要文献等を整理した。 ■ステップ2.現状把握:香川県内の被災時・避難時での障がい者の困難に関する調査:香川県立盲学校(標高1m)は浸水や津波の危険地域に位置することから、外部情報が得にくい視覚障がい者にとって地域住民の協力が極めて重要であると考える。そこで、災害発生時に視覚障がい者が地域コミュニティと連携してできる具体的方策を探るため防災合宿を実施し、避難所設営に関する課題について分析・検討した結果、視覚障がい者の災害対応能力育成のあり方や避難所での居住のあり方についての一端を把握することができた。 加えて、バリアフリー新法では誘導ブロックの設置がうたわれているが、施設内に敷設されていない場合が多く、災害時の避難所生活では視覚障がい者にとって動線を示すものがない。そこで、香川県立盲学校と地域住民の協力を得て、緊急時の移動用具としてのガイドロープのデザインとその敷設方法を探ることを目的とした研究を実施した。 ■ステップ3.現状把握:全国の施設整備と平常時での障がい者の災害対策に関する調査:ステップ2の結果を受けて、災害時対策を実施している特別支援学校を抽出し、現在、現地調査に向けた協議を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を含めた一連の防災教育の取り組みによって、優れた防災教育の取り組みを支援・表彰する事業「防災教育チャレンジプラン」(内閣府主催)の2015年度全国13実践団体の中から、香川県立盲学校が最優秀である大賞を受賞した。地域のさまざまな機関・団体と連携している点、および、視覚障がい者に対する防災教育の前例が少ないなか試行錯誤を繰り返しながら丁寧に取り組んでいる姿勢が高く評価されての受賞であった。 香川県立盲学校は海岸線から200m余りに位置することから、南海トラフ地震発生の際には浸水するとされるとともに、一部の生徒は校内で寄宿舎生活を送っていることから、学校では自分の命を守るために自分で判断・行動ができる児童・生徒を育てようと、地域のコミュニティー組織、香川大学危機管理研究センター、および、多数の企業と連携して、音・匂いや手足の感触などを使った体験的な学習を実践しており、本研究もその一端を担った。盲学校との相互協力による研究を遂行したことによって、調査・研究での時間的制約はもとより、多様な視点からのアプローチや情報の共有が可能となり、課題の発見・解決や研究の深まりが促され研究の成果につながったものと考える。 また、2015年10月の日本インテリア学会において研究成果をまとめた下記の梗概原稿を発表した。 ■学会論文 1)亀井千菜津,藤井 容子:火災煙がロービジョン者と晴眼者の避難に及ぼす影響に関する実験的研究,日本インテリア学会第27回大会研究発表概要集,pp. 91-92,2015.10 2)岡本航輝,藤井 容子:歩行実験による誘導用具としての「ガイドロープ」の可能性,日本インテリア学会第27回大会研究発表概要集,pp.93-94,2015.10
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って、以下のとおり研究を遂行する予定である。 ■ステップ4.[現状把握] 全国の被災時・避難時での障がい者の困難と求められる対応策に関する調査:ステップ3の調査での先駆的・特徴的な特別支援学校を対象として、ステップ2の内容を発展させた形での行動観察調査を実施し、取り組み事例として整理する。即ち、避難訓練時の避難施設・避難ルート・訓練状況から障がい者の災害対策の実態を把握し、その課題を明らかにする。加えて、障がい者の歩行速度(避難行動時間)を明らかにし、安全に避難する方策を検討する。 ■ステップ5.[提案]災害時・緊急時に対応するバリアフリー化方策の検討等:ステップ1~4の調査結果をまとめ、障がい児者の避難時の困難をもとに、平常時、発災時、および、発災の恐れが生じたとき、避難する経路上および避難する場所等の場面ごとに、その経路や避難施設のバリアフリー化などの施設整備とともに情報提供の課題について明らかする。 加えて、これらの成果を踏まえ、今後、災害に備えたガイドラインの普及を推進していく上で必要な事項について検討し、資料として活用できる防災対応ガイドラインを作成する。 ■ステップ6.研究成果の社会化に向けた提言:ステップ1~5の研究成果をまとめ、学会発表、報告書、HP等による公表を通して研究成果を広く社会に還元する。即ち、大学として、これらの研究活動を通じてシステム化を図り、ノウハウとして蓄積し、学問として地域に発信・還元していくとともに、災害時・緊急時に対応した避難経路等のバリアフリー化の課題、対応策、参考事例を成果としてとりまとめることで、地方公共団体等によるバリアフリー環境整備の際の参考資料としての活用が期待できると考える。
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Causes of Carryover |
本年度、ノートパソコンの購入をお認めいただいたことから、調査・研究作業のより一層の効率化が可能となり、当初の想定よりも数少ない研究補助者で研究を遂行することができた。このことにより、次年度使用額が生じた次第です。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究調査における対象地が広く国内に点在していることから、当初の想定より多い「旅費」の支出が必要になるものと考えられますので、次年度使用額をその不足分に充当いたしたく存じます。
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