2016 Fiscal Year Research-status Report
貧困・社会的排除を捉えるための住宅関連指標に関する研究
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15K18182
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
川田 菜穂子 大分大学, 教育学部, 准教授 (90608267)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 住宅政策 / 貧困 / 社会的排除 / 住宅アフォーダビリティ / 住宅困窮 / 若年層 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は前年度にひき続き、1)社会福祉学や経済学の領域において蓄積されてきた貧困・社会的排除に関する既往研究のレビューを行った。また、2)イギリス・フランス、および欧州連合(EU)等の国際機関が実施する主要調査統計のうち、貧困・社会的排除の実態把握を主たる目的とするものを抽出して、調査項目や集計項目から住宅関連指標を抽出・整理し、その動向を分析した。さらに、3)貧困・社会的排除が拡大しつつある日本国内の若年層を対象に、居住の実態や課題を把握する2つの独自調査を実施した。 2)についてはとくに欧州諸国について、住宅価格や家賃の高騰、社会住宅セクターの縮小を背景に、貧困・社会的排除の対策として住宅政策が重要な位置を占めるようになってきていること、貧困・社会的排除を捉えるための指標は、住居費負担のみならず、住宅の質や設備、住環境、住宅や地域における社会関係等の多くの住宅関連指標を含むようになっており、定期的なモニタリングによって政策立案や評価がしやすい仕組みになっていること等を明らかにした。 3)については、平成28年12月に全国に居住する25歳から44歳の男女1,600名を対象として、居住実態や住居費負担の詳細を把握するWEB調査を実施した。実施・分析にあたっては、神戸大学大学院の平山洋介教授、桃山学院大学の村上あかね准教授に協力を得ている。また、貧困・社会的排除の状況におかれやすい典型層として、児童養護施設等を退所した社会的養護経験者に着目し、その居住実態や課題、ニーズを把握するアンケート調査を平成28年12月に実施した。NPO団体や施設職員等に協力頂き、約120名の回答を得た。さらに平成29年3月に、当事者18名を対象に個別ヒアリング調査を実施した。これらの調査結果の一部は、すでに国際会議や研究会等で報告しているが、平成29年度により詳細な分析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度内に、他の住宅研究者やNPO団体等の協力を得て、日本国内の若年層を対象に2つの独自調査を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成29年度は、28年度に実施した独自調査の詳細な分析や国際比較分析を行うとともに、査読論文の執筆・投稿を進めたい。
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Causes of Carryover |
平成28年度に2つの独自調査を実施するため、平成29年度分から前倒し支払請求を行ったが、調査費を比較的低額におさえることができたため残額が生じ、次年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果の公表に関わる英文校正や論文投稿費、学会発表に関する旅費等として使用する。
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