2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18189
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
小菅 瑠香 帝塚山大学, 現代生活学部, 准教授 (50584471)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 建築計画 / 病棟 / 高齢者 / 終末期 / デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では国民の8割が人生の最期を病院で迎える現状を鑑み、高齢患者の入院環境の空間設計に資することを目的として、病棟の訪問ヒアリング調査および利用行動調査を行っている。昨年度(研究初年度)は複数の病棟への訪問ヒアリング調査から、高齢者の多い病棟の特徴を明らかにした。 研究実施計画では2年目の年度目標を、建替を予定している特定の高齢者病院において、建替前後で空間の工夫によってどのように生活が改善されるか整理することとした。この計画に沿って、N病院の建替前の事例を通して、入院環境の現状調査を行った。 N病院は大阪市の民間病院であり、病床数は86 床(医療療養病床46 床1病棟、介護療養病床40 床1病棟)である。建物の老朽化により移転建替を行い、2016年8月より近隣の別の敷地で、医療療養病床60 床で新病院を運営している。新しい病院でも同条件の調査を行って比較できるよう、本年度の調査対象は旧病院の医療療養病棟(46 床)とし、記録調査を2016 年5月23日~6月5日に実施した。 調査期間中の患者の平均年齢は80.5 歳、調査時の患者の平均在院日数は463 日であり、1年以上入院している高齢患者も少なくない。ベッドはほぼ常に満床であり、患者のADLは著しく低い。終末期ゆえの離職率の高さも聞かれた。 期間中の患者の病棟内での転床は17 回であった。転床の理由としては、「医療的継続観察の要・不要」が2回、「看護的継続観察の要・不要(認知症等含む)」が3回、「同室患者への不満」が1回、残りの13 回(退院を除く)はすべて「他患者のベッド調整のため」であった。全転床の約7割弱が、医療や看護的な理由ではなく、病棟運営上の理由で行われている状況が明らかになった。 今年度の調査では、ほぼ満床状態で長期入院患者の多い多床室主体の病棟で、ベッドコントロールに苦労している様子が窺えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は初年度に建替前調査、2年度に建替後調査としていたが、昨年の段階で建替前調査の段取りがずれたため、2年目での建替前調査となった。最終年度の3年目前半で建替後調査を実施できる目途はたっており、また2年目の途中においても中間の成果を帝塚山大学現代生活学部紀要にて発表していることから、研究課題期間内に最終成果をまとめることに問題はなく、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
N病院は2016 年8月より、移転新築した新病院で運営をスタートしている。病棟の空間構成として①個室率の増加、②1フロア1病棟、③ベッドサイドに家族の居場所となる空間の設置など、新たな取り組みを行っている。今後、今回と同様の調査を新病院で実施し、空間構成の違いがベッドコントロールや患者の生活にどのような影響を及ぼすのか、比較研究を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
全国の医療施設事例の訪問ヒアリング調査について、年度末に予定していたものがキャンセルになったため。また当初、調査結果の入力業務の補助者に謝金支払いを想定していたが、現段階では補助者に依頼する必要がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定していた医療施設事例の訪問ヒアリング調査にて使用する。また調査結果の入力業務において補助が必要であれば、その謝金として使用する。
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