2016 Fiscal Year Research-status Report
習合神道儀礼の場の復原的研究―神道書の分析を通して―
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15K18195
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
米澤 貴紀 名城大学, 理工学部, 助教 (40465464)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 儀礼の場 / 習合神道 / 神仏習合 / 儀礼 / 日本建築史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中・近世における習合神道諸派の儀礼の場の特質・志向性を、その場の復原を通して明らかにすることを目的とし、次の3点を行う。1)儀礼の場・空間とその設えに関する資料の収集・整理、2)習合神道諸流派の儀礼の場を図示し、建物モデルの中での復原図を提示する、3)教義・理念を信仰・祭祀の場として形にする際の操作、表現方法の特質・志向性を示す。 平成28年度は、上記のうち、1)と2)に取り組んだ。具体的には、昨年度実施できなかった叡山文庫での資料調査を行い、公刊されている目録には収録されていない文書も含めて内容を確認し、新たに神仏習合神道の一流派である関白流神道で行われた神道灌頂儀礼についての史料を収集した。この資料を基にして関白流における儀礼の場の復原を進め、同じく神仏習合神道である三輪流神道との比較を行い、儀礼の中心となる道場の手前で行われる儀礼とそのための場に差があることを示した。これについては2017年度日本建築学会大会学術講演に投稿済みである。 また、神仏習合神道の儀礼である神道灌頂の場における結界とそのための設えが持つ意味についての考察を進め、発表を行った(日本建築学会関西支部建築史部会研究会)。結界のための設えは神道に由来するものが多く、これが神信仰には欠かせない清浄な場を作り出そうとする志向性に基づくもので、習合しつつも保持された日本の神としての一面を表していることを示した。 また、昨年度収集した資料を基に橘家神道の建築儀礼の場、特に地鎮祭の場の構成理念について検討を行い、発表した(2016年度日本建築学会大会学術講演)。その儀礼の場は、五行説による方位概念を用いて構築されており、そこに神信仰で求められる儀礼の場の性質、実際の実施を考慮した利便性などを考慮して造られていることを示した。 この他、これまで収集してきた資料について文字起こし及び整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、本年度は儀礼の場の復元作業を中心に進め、これらを用いた分析・比較研究に取り組み始めるとしていた。これに対して、本年度は橘家神道と関白流神道について儀礼の場の復原に着手し、日本建築学会にて発表を行った。その中で、各神道流派間での比較のための基礎的な情報を蓄積し、検討も始めているため、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(平成29年度)以降の実施にあたって、現在研究計画の変更、研究遂行上の問題はないため、当初の計画に則って進めていく。 平成29年度は、これまでに収集した資料を基に儀礼空間の復原を行う。特に橘家神道の建築儀礼の場、関白流神道の灌頂儀礼の場についてその復原と考察を行う。また、これまでに収集した史料の中で改めて確認したい箇所が生じているため、神宮文庫、叡山文庫での資料閲覧を行う。 加えて、儀礼を行った建物のモデルを作成するべく、実際の建物の調査を計画している。
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Causes of Carryover |
所属機関が変更となり、調査旅費に差額が生じたため。また、本年度は査読論文投稿を行わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
史料調査及び復原モデル建物の調査に使用する。
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Research Products
(4 results)