2017 Fiscal Year Annual Research Report
Urban Management of Zaibatsu Organizations in Modern Japan
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15K18197
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
野村 正晴 関西大学, 環境都市工学部, 助教 (50634325)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 財閥 / オフィスビル / オフィス街 / 土地異動 / 都市経営 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代日本におけるオフィスビルとオフィス街の成立過程の全貌を開発者側の視点に立脚して明らかにしようとするもので、本課題では三井財閥による日本橋室町の開発と三井物産による支店建築、および三井財閥を源流とする三越日本橋本店本館を研究の対象として、調査研究を行った。 平成29年度は、昨年度までに未達成であった事例について主に三井物産名古屋支店に焦点をあてて追加の調査を実施した。調査は①対象敷地に関する所有権者・地上権者・担保権者の変遷の把握、②平面図をはじめとした図面資料の収集、③現地調査、という昨年度から継続される3つの基礎的作業を実施して、三井財閥の都市経営に関する研究をすすめた。①土地異動の変遷について、名古屋支店の事例では複数個人と名古屋市による所有地が大正5年から大正10年の間に所有権が三井物産に移転して合筆していたことが確認できた。前所有権者の一部が名古屋市という地方自治体であった点で、国有地(大蔵省)であった小樽の事例と異なることが判明した。②大正6年竣工の遠藤於兎設計による地上5階地下1階建鉄筋コンクリート造の社屋については、横浜都市発展記念館所蔵資料『遠藤於菟旧蔵建築資料四』の閲覧により、他の三井物産や三井合資の事務所建築の建築計画との比較検証をおこなった。③周辺街区を含めた現地調査では、小樽・門司港地区といった地方の港町の場合と同様に、鉄道の駅舎を中心として複数の事業主体が共同で開発を行い商業地区が形成されていることを確認した。 本課題の3か年の調査研究によって、法務局資料を用いた検証手法の確立と、解明事項を反映した研究論文の発表は達成されたが、開発を先行させ共同開発の中心となる事業主体が存在したかなどの地域ごとの開発の変遷に関して検証を進めるためには、さらに複数の事例の確認が必要であった点で課題を残した。
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