2015 Fiscal Year Research-status Report
第一原理熱力学に基づく異常原子価元素含有化合物の合成
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15K18217
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
村田 秀信 横浜市立大学, 総合科学部, 助教 (30726287)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 二酸化チタン / ドーピング / 異常原子価 / 第一原理計算 / X線吸収分光 / 高圧合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は二酸化チタン中に添加した微量添加元素に関して、異常原子価を持つ可能性に関して実験・理論計算の両面から研究を行った。 合成実験では、大気圧開放系における実験に注力し、ルチル型二酸化チタン中へ微量の3d遷移金属を添加した試料の合成を行った。合成条件として添加元素の濃度および焼成温度を変化させて試料の合成を行い、得られた試料に関してX線回折測定から求める格子定数のシフトから、添加した元素がルチル型二酸化チタン中に固溶していることを確認した。 分光実験では、銅添加α-PbO2型二酸化チタン中の銅に関して測定を行ったX線吸収端近傍構造(XANES)スペクトルに関して標準物質および理論計算スペクトルとの比較によりその局所状態を決定し、銅がα-PbO2型二酸化チタン中のTiサイトにCu3+として置換固溶しうることを明らかにした。また、その濃度はおおよそ0.5 at%程度までであり、余剰の銅はCu2+として含まれることが分かった。 理論計算では、常圧安定相であるルチル型二酸化チタン、高圧相であるα-PbO2型二酸化チタンに関して、Tiサイトを様々な3d遷移金属元素で置換したモデルを構築し、第一原理計算により、その安定構造およびXANESスペクトルの算出を行った。XANESの理論計算スペクトルの形状から、ルチル型二酸化チタンやα-PbO2型二酸化チタン中に固溶した3d遷移金属が、単純酸化物などの標準物質とは明確に区別できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が所属機関を異動したため、研究体制の構築に時間を要し、当初の予定から遅れが見られる。特に、放射光施設利用実験に関しては、今年度に予定していた分析実験は次年度に振り替えた。 合成実験に関しては様々な3d遷移金属元素を微量添加した二酸化チタンの合成に成功しており、これらの試料に関しては次年度に放射光施設を用いたX線吸収分光法による局所状態分析を計画している。分光実験によりスペクトルが得られた際には、今年度に算出した理論計算スペクトルと比較を行うことで、直ちにその局所状態を決定できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に作製した試料に関して、放射光施設を利用したX線吸収分光法により添加微量元素の状態分析を行う。得られたスペクトルは標準試料および今年度に算出した理論計算スペクトルと比較を行うことで、その局所環境・価数を決定する。 また、合成実験では、大気圧閉鎖系および高圧閉鎖系における微量元素添加二酸化チタンの合成を行い、異常原子価含有の可能性を探る。さらにより高価数の元素で構成される物質として、酸化ニオブや酸化タングステンへの拡張を探る。
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Causes of Carryover |
今年度の直接経費は概ね計画的に使用しており、次年度使用額は1万円以下となったが、無為な予算消化を行わなかったためそのまま次年度使用額として計上した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の使用計画と大きな変更はなく、今年度に発生した次年度使用額は消耗品などの物品費として計上し、使用する。
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