2015 Fiscal Year Research-status Report
環境負荷を考慮した多孔性と磁性のハイブリッド吸着能を有する環境浄化材料の開発
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15K18220
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
中村 和正 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (90433870)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 構造・機能材料 / 複合材料・物性 / 表面・界面物性 / 浄化 / 磁性 |
Outline of Annual Research Achievements |
高機能・高性能な浄化材料を開発するために、磁性と多孔性を両立したハイブリッド吸着能を有する新規浄化材料の作製を目指している。それを作製するために、昨年度は、天然物または人工物由来の原料と、磁気粉末または磁性流体を用いて、プロトタイプとなる磁性多孔質材料の作製を目的とした。 天然物由来の原料であるバクテリアセルロースに磁性粉末または磁性流体を添加、炭素化し、磁性多孔質カーボンナノファイバーを作製したところ、全てのファイバーにおいて磁性が付与された。この磁性は、Fe3O4やそれが還元したα-Feにより発現したことが分かった。このとき、磁性粉末を添加した材料よりも、磁性流体を添加した材料の方が、保持力、飽和磁化ともに優れていることが分かった。また、各材料の吸着測定を行なったところ、磁性粉末を添加した材料よりも、磁性流体を添加した材料の方が、比表面積および細孔容量が劇的に増大し、特に、メソ孔径に対応する細孔の発達が見られた。バクテリアセルロースへヨウ素処理を施し作製した磁性多孔質カーボンナノファイバーは、ヨウ素未処理に対する材料と比較して、磁気特性が若干低下したが、比表面積および細孔容量は増大し、特に、ミクロ孔径に対応する細孔の発達が見られた。これらの結果から、バクテリアセルロースと磁性流体を用いることで、磁性多孔質カーボンナノファイバーが作製でき、且つ、原料へのヨウ素処理を利用することで、細孔径を制御できることが示唆された。 人工物由来の原料であるセラミックス多孔体に磁性流体を滴下または含侵させることで作製した磁性多孔質セラミックスは、磁気測定上、定性的には磁性を付与できることが分かったが、その値は非常に小さく、且つ、基質のセラミックス多孔体が反磁性であることから、明確な磁気特性を定量化することは難しかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、天然物由来の原料であるバクテリアセルロースと磁性流体を使用して、磁性多孔質カーボンナノファイバーが作製できた。つまり、磁性と多孔性が両立した材料を作製することができた。バイオマス炭素化物に磁性粉末を添加した材料に関する学会発表を行なった。また、ヨウ素処理を利用することで、細孔径が制御できることも推察された。つまり、磁性と多孔性の両立だけでなく、細孔径の制御が可能となり得るとの新たな知見も得られつつある。これらを踏まえ、磁性多孔質カーボンナノファイバーの磁気特性および細孔特性に与える作製条件、特に、炭素化温度の影響についても、昨年度末より実験を始めている。また、人工物由来の原料を使用した磁性多孔質セラミックスの作製では、思うように磁気特性が得られなかったため、昨年度末より基質のセラミックス原料も液体試薬とし、液体同士の混合による磁性と多孔性の両立に向けた材料作製を行なっており、磁性を付与すること、または、気孔が空くことなどの知見が得られ始めている。これらの結果より、人工物由来の原料を使用した磁性多孔質材料に関しても、磁性と多孔性の両立した材料の作製条件に対する見通しがついてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
水質または大気に対する浄化材料は、様々な作製法や種類が開発されているが、更なる高機能化・高性能化が求められている。さらに、循環型社会や環境負荷を考える上で、天然物由来の原料の使用、または、人工物由来の原料であっても低プロセス工程での材料作製も重要である。そこで、磁性と多孔性を両立させたハイブリッド吸着能を有する新規浄化材料の開発を進めている。昨年度に得られた結果を基に、以下の2つの研究を推進する。 1) 天然物由来の原料を使用した磁性多孔質材料の作製では、プロトタイプの材料が作製できたので、磁性と多孔性が最大限に両立する条件を探索する。つまり、炭素化温度の差異による影響を検討するとともに、それ以前の磁性流体の添加量ならびにヨウ素処理の有無なども合わせて検討する。 2) 人工物由来の原料を使用した磁性多孔質材料の作製では、液体原料を用いる際、磁性または、気孔が別々に発現する条件が分かりつつあるので、本年度中の可能な限り早い段階で、磁性と多孔性が両立する材料の作製が可能となるように研究を進める。
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究を通し、1500円ほど残予算が出たが、これは第2期中期計画終了年度のため、財務の締めが例年よりも早く、最終的な調整が間に合わなかったためである。また、落雷に伴う停電による装置の破損に対する修理のために、部品を購入しなければならず、若干物品費が多くなっている可能性がある。材料作製には原料や試薬の費用が必要であり、装置を維持するために部品などが必要であるため、消耗品としての物品費が必要不可欠である。また、研究成果が出た際には学会発表を行なう必要があるので旅費等が、投稿論文には投稿料等が当然必要となってくる
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、材料作製に必要な原料や試薬などや、作製装置を維持するための冶具など、消耗品の購入のために物品費を計上し執行する予定である。研究の進捗が見られ次第、学会などで成果報告を行なうとともに、その際の旅費等を昨年度よりも多く計上し執行する予定である。また、現在、成果報告のために投稿論文執筆中であるので、その投稿費や印刷費にも経費を計上し執行する予定である。
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