2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K18222
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松嶋 道也 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90403154)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 導電性接着剤 / 電子デバイス実装 / 低温接合 / 熱伝導率 |
Outline of Annual Research Achievements |
導電性接着剤は低温で接合可能でありながら,実装温度以上の耐熱特性を持つ実装材料であるが,鉛フリーはんだよりも機械的特性,熱伝導性,電気伝導性が低く,これらの特性向上が課題となっている.電気・熱伝導特性が劣る原因としては金属間の接触抵抗や樹脂層による抵抗により金属間の導通パスが小さくなるためであると考えられる.そこで,フィラー含有率を向上させ,金属フィラー間ギャップを短縮し導通パスが増加すること,および低融点金属を金属フィラー間に添加し,金属架橋構造を形成することによる熱伝導特性の改善効果を検証するために,接着剤中のフィラー間ギャップが熱伝導特性へ与える影響と金属フィラー架橋構造形成が熱伝導特性へ与える影響について明らかにした.熱伝導解析においては,Cuフィラー含有導電性接着剤のフィラー間ギャップと熱伝導率の関係を明らかにした.また, Cuフィラー含有導電性接着剤のフィラー間をSnBiの架橋が形成した場合の熱伝導率特性の改善効果を検証し,有効であることが明らかになった.実験的には,Cuフィラー含有導電性接着剤の銅板接合体を作製して熱伝導率の測定を行った.Cuフィラー含有率を変化させた場合の熱伝導率を測定した.また,SnBiフィラーを添加した場合の断面観察によって架橋構造が形成していることを確認するとともに,その添加量増加に伴う熱伝導率の変化を測定した.さらに,添加するSnBiフィラーのサイズを小さくすると,その分散性が向上し,熱伝導率向上に有効であることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱伝導解析により,Cuフィラー含有導電性接着剤の熱伝導率がフィラー間ギャップの短縮によって増加し,ギャップが2μmから0.1μmに短縮することで約3倍の熱伝導率増加が得られることが明らかになった.実験的にもフィラー含有接着剤の熱伝導率測定により,フィラー含有率の増加により熱伝導率が増加する傾向が得られ,60vol%で約8W/mKを示した. 金属架橋構造が熱伝導特性に与える影響を評価するために金属架橋モデルについて伝熱解析を行った.SnBiぬれ幅の増加・Cuフィラー間のSnBi高さの低下により熱伝導率が向上する傾向が得られ,Cuフィラー間距離が0.8μm,SnBiぬれ幅が10μmのとき,Cuフィラーのみのモデルと比較すると熱伝導率が約20倍の増加が見込まれた.実験的には,導電性接着剤に添加するSnBiフィラー粒径を変化させたとき,Cu50vol%にφ20μmのSnBiを20vol%添加したサンプルは,17W/mKの熱伝導率となり,Cu50vol%サンプルと比較して3倍以上の値を示した.以上の結果より,解析による見積ほどの効果は得られなかったが,金属架橋構造の形成による伝導パスの増加が熱伝導特性の改善に有効であることが明らかになっており,おおむね順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
低融点金属含有による導電性接着剤の界面抵抗の低減が熱抵抗の向上に効果的であることが明らかになったが,解析による見積りからは乖離があったため,解析との相違点を明らかにするとともに,樹脂自体の抵抗低減を目的に,酢酸銀または硝酸銀を用いて樹脂中にイオン化金属を分散させた材料開発を行い,熱伝導率以外に電気伝導率とせん断試験による接着強度の測定を行う予定である.
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Causes of Carryover |
実験材料の手配を行う前に解析的な検討を十分実施すべきとの判断から,本年度は解析を中心に検討し,実験検証を熱伝導率のみに絞ったため,その他の評価実験を次年度に延期することとした.したがって,実験用の一部の消耗品は次年度の実験の進捗に応じて手配するために,26,284円を次年度の研究費として繰り越した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度より繰り越した研究費は,前年度実施予定であった強度試験や導電性試験における金属表面処理用の薬剤や樹脂材料の購入に充てる予定である.
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