2016 Fiscal Year Research-status Report
異種金属摩擦攪拌接合における中間相の瞬間的異常成長挙動の解明とその制御技術の確立
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15K18225
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Research Institution | Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
田中 努 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所, その他部局等, 主任研究員 (90416248)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 摩擦攪拌接合 / 鉄鋼 / アルミニウム / 異種金属接合 / 接合温度 / 放射温度計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、鉄鋼とアルミニウムの摩擦攪拌接合特有の接合状態[被接合材(ワーク)と接合ツールとの関係]が、接合温度および金属間化合物形成にもたらす影響について調査した。接合中最も高い発熱が予想されるのは、接合方向後方のショルダ部および鉄鋼を削るプローブ側面である。しかし、実際の接合では、プローブはワーク内であるため、鉄鋼を削る温度を測定することはできない。そこで、本研究ではアルミニウムを排除し、鉄鋼のみ配置し、実際と同じ接合ツール軌道における接合方向後方のショルダ部およびプローブ側面の温度を2色放射温度計にて測定した。各接合条件における温度測定を行った結果、接合方向後方のショルダ部の温度は、プローブ側面の温度よりも50~200度高い傾向があることがわかった。また、これまでに報告されている接合温度は最高でも500度程度であったが、今回の実験では接合ツール回転数が1200rpmで500度を示し、1800rpmでは1000度近い値を示すことが新たにわかった。また、接合サンプルの平断面を作製し、接合直後、すなわちプローブが鉄鋼を削った直後からの距離と金属間化合物厚さとの関係を調査した。その結果、ショルダの影響を受けるワーク上面近傍において、ショルダの押し付けによる鉄鋼の塑性変形と急激な金属間化合物の成長が観察された。一方、ショルダの影響を受けないワーク内部においては、鉄鋼の塑性変形は観察されず、金属間化合物相の急激な成長は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、接合したサンプルの金属間化合物を観察する予定であったが、摩擦攪拌接合の接合原理に立ち返り、課題解決のキーとなるパラメータ(接合温度)に焦点を絞って実験を行った。その結果、摩擦攪拌接合特有の金属間化合物形成メカニズムに影響する因子(接合温度とひずみ)を見出すことができたため、研究目標達成に大きく前進したと認識している。最終年度は、これらの因子に着目し、金属間化合物の形成メカニズムに与える影響を定量的に評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
鉄鋼とアルミニウムの摩擦攪拌接合中の金属間化合物の急激な成長は、これまでの報告よりも大きな発熱と鉄鋼の塑性変形に起因していることが示唆された。そこで、塑性加工シミュレーションおよび電子線後方散乱回折(EBSD)解析、接合中の加圧力測定を行うことにより、温度やひずみの解析を行い、これらのパラメータが金属間化合物成長速度に及ぼす影響を調査する。具体的には、塑性加工シミュレーションでは、プローブおよびショルダの鉄鋼への接触により発生する温度分布、接合ツールの通過に伴い発生する塑性ひずみやひずみ速度を計算で求める。EBSD解析では、接合界面近傍の塑性変形した鉄鋼におけるひずみを結晶の方位差によって明らかにする。また、接合中の加圧力を意図的に変化させ、接合温度や鉄鋼の塑性変形量、さらに形成する金属間化合物厚さを測定することにより接合中の加圧の影響を解明する。これらの結果を考察し、異種金属摩擦攪拌接合における金属間化合物の形成メカニズムを提案する。
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Causes of Carryover |
学会等の聴講による情報収集、研究成果の発表を行う予定で旅費およびその他予算を計上していたが、研究成果がまとまった段階で発表することとし、2016年度内の学会発表は見合わせることとしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度研究をより迅速に進めるため、組織観察用試料作製方法としてイオンスライサーを用いる予定である。今年度の未使用予算については、この装置の消耗品購入に充てる計画である。
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Research Products
(1 results)