2015 Fiscal Year Research-status Report
Mo5SiB2の物理的・機械的性質に対する非化学量論性
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15K18229
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 純也 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60613031)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超高温材料 / マイクロピラー |
Outline of Annual Research Achievements |
Mo5SiB2 は溶解法で作製する場合、化学量論組成から著しく外れた組成領域で初晶が晶出し、また複雑な凝固経路を辿りながら共晶組織を含むミクロ組織を形成するため、Mo5SiB2 単相材を得ることは非常に困難である。そこで本研究では、Mo5SiB2 の非化学量論組成の影響を調査するため、平衡状態図中の二相・三相領域を利用することによって非化学量論組成のMo5SiB2 を得る。 試料作製は、鋳造欠陥や原料に由来する酸化物などの不純物混入の少ないアーク溶解法を用い、純Mo, 純Si, 純B を用いて、Mo-Si-B 三相平衡状態図上でMo5SiB2 単相領域の各頂点近傍の三相領域に対応する目的の組成に秤量した試料を熔製した。試料は1900℃で150hの均質化処理と1800℃で24hの平衡化熱処理によって、Mo5SiB2の体積率90%以上の試料を得た。同一の結晶構造を持つ物質に対して、変形応力を与えるパイエルス-ナバロウ応力を支配するパラメータとして非常に重要な物性値である弾性定数の評価やナノインデンターによるマイクロピラーを用いた微小圧縮試験が困難な高温力学特性を評価するために必要となるMo5SiB2 体積率の高い複相材として利用する。現在もより高いMo5SiB2体積率を達成するため、継続して合金組成、熱処理条件の検討を続けている。 作製した試料に対して、マイクロピラーを用いた室温圧縮試験、およびナノインデンテーション法を用いた室温硬度測定によって、Mo5SiB2の室温機械的性質に対する非化学量論性の評価を行い、Mo5SiB2の破壊応力と室温硬度に相関性があることを見出した。また、マイクロピラーを用いた室温圧縮試験において、Mo5SiB2の室温変形モードを観察し、そのすべり系の同定と転位の分解挙動を解析し2016年3月に開催された春期金属学会にて詳細を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ、当初の研究計画の構造パラメータの評価に先んじて、室温強度の評価を先行している。これは、本研究課題にとって重要なマイクロピラーを用いた単結晶室温圧縮試験によるMo5SiB2の変形挙動調査の可否を判断することを優先したためである。 マイクロピラーを用いた圧縮試験では、特定の結晶面でのすべり変形を確認するとともに、その破壊応力とナノインデンテーション硬さに非化学量論組成に依存した傾向があることを見出した。 また、試料の作製および調質条件の調査も良好に進んでおり、高温機械試験および弾性率測定に供する高体積率Mo5SiB2の試料の作製も進めている。変形組織の解析や弾性率測定の一部にも既に着手しており、その結果も順次得られている現状である。 従って、本研究課題の進捗状況として概ね順調に展開しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続きより高いMo5SiB2体積率の試料作製とナノインデンテーション法による室温硬度測定とマイクロピラーを用いた室温単結晶圧縮試験を行い、Mo5SiB2 相の弾性率や降伏強度、せん断すべり挙動の調査を行うと共に、作製した試料に対して、電磁超音波共鳴法を用いて室温から1000℃までの弾性定数の温度依存性の評価および高温圧縮試験によって高温の力学特性評価を行う。また、変形組織に対して、透過型電子顕微鏡を用いて転位下部組織の観察や暗視野法による転位のバーガースベクトル、分解挙動の解析を行う。 これらに加えて、格子定数は、非化学量論性を示す重要なパラメータの一つである。また、第一原理計算に用いる結晶構造モデルを作成するためには、格子占有挙動や構造欠陥の予測も必要である。そこで本研究では、1200℃まで昇温可能な高温チャンバーを備えたX 線回折装置を用いて、非化学量論組成を有するMo5SiB2 の、室温から1200℃までの温度範囲における格子定数の温度依存性を調査する。また、リートベルト解析により、原子の分率座標、各格子位置での占有率、原子の変位パラメータ等の構造パラメータの精密化を行う。上記の検討に加えて、計算機科学的アプローチとして、非化学量論組成を有するMo5SiB2 の結晶構造モデルを構築し、第一原理計算によって全エネルギー変化に基づいた相安定性の評価、構造緩和を考慮した計算によって格子定数および原子の変位パラメータの検討を行う。これらの結果に基づいて、第一原理計算による計算的手法と実験的手法から得られた各パラメータについてMo5SiB2 の非化学量論性を明らかにする。
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Research Products
(2 results)