2015 Fiscal Year Research-status Report
Si-NiSi2の整合界面コンポジット化による理想的ナノ結晶熱電材料の創製
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15K18233
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大石 佑治 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20571558)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 液相焼結 / Si-CoSi2コンポジット / 欠陥 / 熱伝導率低減 |
Outline of Annual Research Achievements |
Si母相中に自己組織的に界面を導入し、ナノ結晶の理想的な性能を有するナノ結晶熱電材料を合成しようと試みている。27年度は、液体急冷法を用いてPをドープしたSi母相中に微細なCoSi2を分散させたようなリボン状試料を作製し、放電プラズマ焼結法によって焼結した。CoSi2とSiは共晶系であり、共晶組成ではSiの融点よりも低い温度で溶融する。そこで、焼結温度を様々に変化させ、焼結時に試料の一部のみが溶融する温度条件を探った。その結果、特定の温度では焼結時に試料の一部のみが溶融することが明らかとなった。そのようにして焼結した試料の熱伝導率をレーザーフラッシュ法を用いて評価したところ、全く溶融しなかった試料に比べて熱伝導率が大幅に低減することが明らかとなった。一方で、試料の溶融は電気伝導率やゼーベック係数といった電気的特性には大きな影響を与えなかったため、一部溶融した試料の熱電性能指数は全く溶融しなかった試料に比べて大きく向上した。 このような現象が生じた理由を調べるために、透過型電子顕微鏡を用いて微細組織の観察を行った。その結果、一部溶融した試料では、欠陥が密に生成していることが確認できた。一方で、溶融しなかった試料ではこのような欠陥は確認できなかった。この欠陥がフォノンを散乱することで、熱伝導率が大幅に低減したと考えられる。焼結時に試料の一部を溶融させることで、何故このような欠陥が生成するかについてはまだ明らかになっておらず、今後Siへ加えるドーパントや金属種、焼結圧力や温度の影響を調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではSiとNiとの反応焼結を行い、その際に生じる応力によって双晶を発生させ、界面を導入しようと考えていた。しかし、Si-Coコンポジットを液体急冷法によって急冷したところ、CoSi2がSi中に微細に分散したような組織が形成されることが明らかとなった。Si-CoSi2は共晶系であることから、このような組織においては、特定の温度では試料の一部のみを溶融させることができる。そこで、溶融凝固時の体積変化によってSi母相中に応力を発生させ、界面を導入しようと実験を行った。その結果、試料の一部のみが溶融するような温度で焼結した試料においては狙い通りSi母相へ欠陥を導入することに成功し、熱伝導率の提言によって熱電性能が向上することを確認した。当初の計画の手順とは若干異なるが、結果的に当初の狙い通りの結果を得ることができたため、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
一部のみを溶融させたSi-Coコンポジットにおいて欠陥が生じた理由として、溶融した箇所が凝固する際の体積変化が考えられる。しかし、Siへドーパントとして加えたPの影響やCoのSi中での拡散挙動による影響も考えられる。そこで、欠陥が生成した理由を調べるために、ドーパントや金属種を変えた試料を作製し、これらが欠陥形成に与える影響を調べる。また、ラマン分光測定を行い、試料中に応力が発生しているかどうかを調べる。また、さらに高密度に欠陥を生成させるための方法を模索し、さらなる熱電性能の向上を目指す。
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Causes of Carryover |
当初は熱処理によってSi母相中へ欠陥を導入しようと考えていたため、熱処理用に加熱炉一式を計上していた。しかし、熱処理ではなく液体急冷後の試料を焼結することによってSi母相へ欠陥を導入でき、熱電性能が向上することが明らかとなったため、熱処理に用いるために購入予定であった加熱炉一式を購入しなかったことが繰越が生じた主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は、欠陥が導入されるメカニズムの解明、及び欠陥導入プロセスの最適化によるさらなる熱電性能の向上を行う予定である。そのためには、ドーパントや金属種を変えて様々な試料を作製し、透過型電子顕微鏡観察やラマン分光観察を行う必要がある。試料作製のためには、液体急冷が必要であるため、液体急冷法で用いる消耗品であるボロンナイトライド製のノズル、及び焼結治具を購入する。また、透過型電子顕微鏡観察やラマン分光観察の外注費に用いる予定である。
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