2015 Fiscal Year Research-status Report
リチウム資源問題を解決する常温作動型ナトリウム二次電池の開発
Project/Area Number |
15K18240
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
片岡 理樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電池技術研究部門, 研究員 (20737994)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナトリウム二次電池 / 無機合成 / 酸化物 / 正極材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
資源豊富なナトリウムを電荷担体として用いるナトリウム二次電池は、資源制約が小さくかつ比較的高エネルギー密度な電池を実現できる可能性がある。本研究では、現行のリチウム二次電池用正極材料と同等のエネルギー密度を有するナトリウム二次電池用正極材料の開発に取り組む。 通常、電極活物質に用いられるナトリウム含有金属化合物は、焼成プロセス等により原料を反応させることにより作製し、得られた活物質を用いて電極を作製する。本研究では、原料を混合・複合化した後、焼成プロセスなどを経ずに混合物・複合体の状態のまま、電極作製を行い、初期充電過程で生じる電気エネルギーを利用して、ナトリウム挿入脱離可能な電極活物質の合成を試みた。 種々の遷移金属酸化物とナトリウム過酸化物を原料として上記方法にてナトリウム二次電池材料の探索を行った結果、特にMnを用いた複合体では、高容量なナトリウム正極材料となり、現行のリチウム二次電池正極材料のエネルギー密度と同等の約550Wh/kgの初期エネルギー密度が得られることがわかった。この材料は200mAh/g程度と酸化物系の正極材料として高容量だが、一方で平均放電電位が約2.7Vと、これまでに報告されているナトリウム二次電池用正極材料の電位と比べても0.3~0.5V程度低く、次年度以降の課題として残った。 また、X線回折測定の結果より、充電時に原料のMn酸化物が4価まで酸化され、ナトリウム挿入脱離可能であることが知られているλ-MnO2まで変化することがわかった。この変化は、反応性に差はあるものの、MnO、Mn2O3およびMn3O4など種々のマンガン酸化物において確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、LiやMgなどのⅠ、Ⅱ族イオンの伝導パスを持つ骨格構造を有する材料に関して電気化学的にナトリウムと強制的にイオン交換して、ナトリウム挿入脱離可能な新規材料を探索することであったが、期待通りの反応が進みかつ多量のナトリウムを挿入脱離可能な骨格構造を有する材料の発見には至らなかった。引き続き、上記イオン交換プロセスによる材料探索を行っていく予定ではあるが、新たな材料探索の手法として、電池の充電反応を利用した電極材料合成について検討した。その結果、本研究で目標値とした現行のリチウム二次電池用正極材料と同等の初期エネルギー密度を有する材料の開発に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に、成功した材料の高エネルギー密度化を目指す。 具体的には電極作動の高電位かを試みる。昨年度検討したMn酸化物は、他の遷移金属を用いた場合と比べて、動作電位が低い傾向にある。そこで、Mnの一部を他の元素で置換することで動作電位の向上を目指す。 本研究で検討している材料は、原料の複合化過程で結晶性が大きく低下するため、通常の粉末XRD測定だけでは、精度よく材料の素性することが難しい。局所構造解析手法などを適宜組み合わせて、より正確に材料の充放電反応メカニズムを解明できるアプローチを検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
参加した国際会議における外国出張費が予定していたより安く抑えらえ、また、最初予定していた外注分析の必要がなくなったため、使用計画額と比べて差が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、昨年度に得られた成果発表のため。2件の国際会議の参加を予定しているため、昨年度と比べて外国出張旅費が必要となると考えている。また、本年度は外部への実験依頼および外部施設での実験を複数回予定しており、次年度使用額を含めると適正な予算額になると考えている。
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Research Products
(3 results)