2016 Fiscal Year Research-status Report
無容器凝固プロセスを用いた鉄系非晶質材料の組織制御指針の構築
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15K18244
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉年 規治 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (60586494)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 単分散粒子 / 鉄系金属ガラス / 軟磁性材料 / ナノ結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
パルス圧力付加オリフィス噴射法により作製した粒径465 μmの単分散Fe76Si9B10P5粒子は、XRD、DSC、TEMにより内部に均一なアモルファス構造を形成していることが確認された。また、熱処理によって粒子は内部に平均結晶粒径25~30 nm程度のナノ結晶相が析出し、同組成のリボン材と比較して微細な結晶相が析出することが明らかとなった。1粒子を用いた磁気特性評価では、1粒子の最大飽和磁束密度として1.64 Tを示し、同組成のリボン材よりも高い飽和磁束密度となることが明らかとなった。これは粒子が無容器凝固に起因して表面や内部に均一なアモルファス構造を形成しているために、強磁性のα-Feの析出頻度が多くなっているものと考えられた。また、強磁性のα-Feの析出頻度を増加させるため、Cuを微量添加した(Fe76Si9B10P5)99.75Cu0.25、(Fe76Si9B10P5)99.5Cu0.5単分散粒子を作製し、同様に内部組織と磁気特性評価を行った。その結果、Cuを0.25 at%添加した粒子は内部に完全なアモルファス構造を形成していたが、Cuを0.5 at%添加した粒子はガラス形成能の低下により、As-Qの状態で一部結晶化が生じていることが明らかとなった。また、磁気特性評価結果より、Cuを添加した粒子は常磁性のFe-B系化合物相の析出量が減少しているために合金の磁気特性は向上し、Cuを0.25 at%添加した粒子の最大の飽和磁束密度は1.69 Tを示した。しかし、Cuを0.5 at%添加した粒子はAs-Qの状態ですでに一部結晶化が進行していたために、熱処理過程で化合物相の析出が進行し、熱処理による飽和磁束密度の上り幅は小さくなる結果となった。次年度にはこれらの詳細な内部組織構造をTEM観察により分析し、ナノ組織構造と磁気特性の相関性について調査を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の早期に単粒子での磁気特性評価法について確立することに成功し、予定通りに合金組成や内部組織と磁気特性の相関性についての調査を実施することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
強磁性のα-Feの析出頻度を増加させるため、Cuを微量添加した(Fe76Si9B10P5)99.75Cu0.25、(Fe76Si9B10P5)99.5Cu0.5単分散粒子の熱処理後の内部組織評価と磁気特性評価を引き続き行う。特に内部組織の粒径やその分布・数密度などの観点から整理し、最適な組織形態について明らかにすることにより、無容器凝固での急冷粒子の組成設計指針を得る。また、さらに鉄濃度を増加させた組成についても新たに計画に組み入れ、さらなる高飽和磁化を狙う。
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Causes of Carryover |
単粒子を用いた磁気特性評価法を早期に確立することができたため、試料の作製回数を大幅に削減できたため、原料合金にかかる費用を節約することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画当初よりさらに高い鉄濃度組成についても作製ができる可能性があること、また、その際にはさらに優れた特性を期待できることから、新たに高鉄濃度組成について計画に組み入れ、次年度使用額として有効に使用する予定である。
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