2016 Fiscal Year Research-status Report
気泡ウエイク構造を利用した溶融塩浴活性金属液滴エマルジョン化による高速共還元法
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15K18250
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
夏井 俊悟 北海道大学, 工学研究院, 助教 (70706879)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 溶融塩電解 / 界面形状 / 共還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
溶融塩中の酸化物イオンO2-の溶解性は酸化物還元速度に強く影響するので、溶融CaCl2はO2-イオンと液体Ca金属の両方が高い溶解度を示す魅力的な溶媒とされ広く用いられている。純粋なTiにおける液体Ca金属脱酸を例に挙げると、100mass ppmO未満の非常に低い酸素レベルを達成することが報告されているが、電解Caを用いた直接共還元法ではそのレベルに達するのは未だ困難である。 溶融塩中Me(= Ca、Liまたはそれらの合金)を用いた酸化物XOx-1(s)の熱還元の場合、陰極近傍に溶解したMe(l)を伴うことが必須であり、XOx-1(s)はカソードその近くに配置される。このメカニズムでは、陰極と酸化物が直接電子的に接触しなくても還元が進行する。したがって、この方法の還元効率は、電解析出Me(l)および溶融塩界面の形態によって大きく影響される。723K、Li-LiCl-KCl-Li2O系の場合、Li2Oの溶解度はLi2Oの含有量とともに増加することが見出されており、真の溶解に加えてLiのコロイド微粒子溶解が起こることを示唆している。最近では、コロイドLiの生成は線形電流密度に強く依存し、電流密度はその形成を引き起こすことが示唆されている。さらに、ラマン分光法によるその場観察により、電析Liと溶融LiCl界面に生成する物質がリチウムクラスターLi8と一致しているとの報告もある。 溶融塩界面で生じるコロイド状Liが電流集中によって影響を受けるならば、本現象には、二融体界面のモルフォロジーが影響を及ぼすことが示唆される。本年度は、数値流体力学的手法の開発の進展、溶融塩中での溶融金属電析時における電気化学的応答、ならびに高速顕微鏡で得られた結果を広く解析することにより二融体界面の分散形態の調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主に電気化学測定とその場観察実験で進展があった。LiCl-KCl-Li2O溶融塩における生成液滴Liの形態を検討するために、まず、本系におけるCV測定から0.0、0.1 mol% Li2Oのいずれの場合も、約-2.5 V vs. Ag+/Ag付近で、カソード電流および対応するアノード電流の急激な増加が観察され、それぞれLiの析出と析出物の溶解に起因すると考えられるが、大きな変化は見られなかった。瞬間的な電流効率はLi2O添加によって増加した。コロイドLiの生成量がLi2Oの添加によって減少したことを確認し、これは従来知見と一致する。金属Liの溶解量は浴中のLi2Oの含有量の増加に依存しないことが報告されているので、コロイドLiの生成は真のLi溶解量との関係性を見出されなかった。 また、機械的攪拌によりTiO2を流動化したときの電気化学的挙動を調査した。流速増加により-1.5V付近からの電流増加が生じた。しかしながら、回転速度の増加に伴って、溶解に対応する電流ピークは減少傾向を示した。この原因として液体Liの電極からの離脱が考えられる。 電析液体Liの一時的な界面挙動を理解するために、Moカソード上で-2.55Vまたは-2.75V vs. Ag+/Agで1.00秒間のCA測定および電極の高速撮影を行った。電流-時間曲線に対応する電極表面画像よりMo電極の表面に液滴が形成されて成長することが判明した。液相析出物はMo表面上で不均質に成長する。電気毛細管現象を考慮すると、液滴の電荷と電極内の電荷との間の静電引力のために、界面のエネルギーが減少し、電極の濡れ性が向上するはずであるが、液滴は電極表面上に完全には濡れなかった。この知見は、二融体間界面張力が分極中であっても液滴形成の支配的要因と成りうることを示している。以上の知見を収集できたため、おおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
0.0mol%のLi2Oの場合には、電位の絶対値にかかわらず、液滴成長サイトがほぼ同じであることがわかった。電流の集中は、電極の表面粗さの影響を受けると考えられる。0.1mol%のLi2Oの場合、液滴がわずかに平坦化したように見える。そこで、以下の仮定をおくことにより、研究の推進方策を検討する。すなわち、液体Liは極めて活性なので、系内O2-の増加とともに、O2-はLi表面に速やかに配位すると考えられる。液体Liは比較的高い表面張力(673Kで0.365N/m)を示すが、Li-salt間の界面張力はこの機構によって減少する。流体力学的不安定性が与えられると、液体膜が堆積によって伸張されると、液体膜の表面は局所的に凹状になり、負のラプラス圧が生成されることを考える。 O2-濃度増加に起因する界面張力の減少は、液滴界面を平坦化し、局所的な電流集中を妨げることが可能か、検討を行う。コロイドLiの不均質な分布は、塩の局所的なLi溶解度に起因する可能性があるため、不活性なAr気泡および機械的攪拌による外乱が液滴表面流れに与える影響についても検討する。
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[Presentation] SPH Analysis of Interfacial Flow of the Two Immiscible Melts2016
Author(s)
Shungo Natsui, Ryota Nashimoto, Tatsuya Kikuchi, and Ryosuke O. Suzuki
Organizer
Advances in Molten Slags, Fluxes, and Salts: Proceedings of the 10th International Conference on Molten Slags, Fluxes and Salts (MOLTEN) 2016
Place of Presentation
Seattle, Washington, USA.
Year and Date
2016-05-22 – 2016-05-26
Int'l Joint Research
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