2015 Fiscal Year Research-status Report
ゲルネットワーク構造デザインによるCO2高速透過性耐圧イオンゲル膜の開発
Project/Area Number |
15K18256
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
神尾 英治 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30382237)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | CO2分離膜 / イオン液体 / 高強度ゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、当初予定通り、(I)ゲルネットワーク形成ポリマーの設計と合成、および(II)高強度IPN構造形成技術の確立とその最適構造設計に関して検討を行った。(I)ゲルネットワーク形成ポリマーの設計と合成では、強電解質であり剛直な2-acrylamido-2-methylpropanesulfonic acid(AMPS)およびCO2反応性イオン液体と高い親和性を有するdimethylacrylamide(DMAAm)からなるダブルネットワークゲルにCO2反応性イオン液体であるアミノ酸イオン液体および非プロトン性複素環アニオン型イオン液体を含有させることにより、高強度イオンゲルの作製法を確立した。さらに、AMPSとDMAAmをセグメントとするランダムコポリマー(poly(AMPS-co-DMAAm))を、各々、ダブルネットワークゲルの1stネットワークと2ndネットワークとして用い、そのセグメント比を種々調製することで、ゲル内に内包されたCO2反応性イオン液体の保持性能を評価し、AMPSセグメントがCO2反応性イオン液体の保持に重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、調製した高強度イオンゲルを各々フィルム化し、そのCO2選択透過性能を評価した。種々の高分子ネットワーク組成のCO2反応性イオン液体含有高強度イオンゲル膜のCO2透過性能を評価したところ、CO2反応性イオン液体含有量が80 wt%以上のイオンゲル膜は同じイオン液体を含有する含浸液膜よりも速いCO2透過性能を有していること、さらに、膜間差圧700 kPa以上の耐圧性を有することを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の実施を計画していた(I)ゲルネットワーク形成ポリマーの設計と合成については、CO2反応性イオン液体を含有する高強度イオンゲルを調製可能なゲルネットワークポリマーの設計および合成に成功し、優れたイオン液体保持性と機械的強度を兼ね備えるイオンゲルの調製に成功した。作製したイオンゲルは圧縮試験及び引張試験により、その機械的強度を評価した。さらに、ランダムコポリマーを用いた高強度ゲルの調製とそのイオン液体保持性に関する検討から、ゲル内に含有したイオン液体はゲル浸透圧によりゲルネットワークに保持されており、強電解質セグメント組成が高いほどイオン液体保持性が高いことを見出した。これにより、イオンゲルのイオン液体保持性と機械的強度に関するネットワーク設計指針を得ることができた。ゲル内のイオン液体保持性に及ぼすイオン液体種の影響に関しても、5種類のアニオンを有するイオン液体について、その保持性を評価し、保持性に優れるイオン液体を見出した。以上の検討より、優れた機械的強度とイオン液体保持性を併せ持つ最適ネットワーク構造設計指針を得た。以上は当初の計画通りである。 一方、作製した高強度イオンゲルは膜状に成型し、加圧場におけるCO2透過性能を評価した。高強度イオンゲル膜のCO2透過係数はゲルネットワーク組成の増大とともに大きくなることから、CO2透過の律速段階が膜内拡散律速であることを確認した。また、CO2反応性イオン液体含有量が80 wt%以上のイオンゲル膜は同じイオン液体を含有する含浸液膜よりも早いCO2透過性能を有していること、さらに、膜間差圧700 kPa以上の耐圧性を有することを明らかにした。以上は当初計画では平成28年度に実施する検討項目であるが、予定よりも早く検討に着手できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画どおりの進捗状況であり、平成28年度も予定通り、作製したイオン液体含有高強度ゲルについて、CO2吸収性、ゲル内CO2拡散性、およびCO2選択透過性に関する検討を行う。CO2吸収性の検討は、任意温度条件における吸収等温線を作成し、その解析からCO2吸収反応の熱力学定数を決定するとともに、任意温度、任意圧力雰囲気でのCO2吸収量を推算可能とする。また、CO2選択透過性の解析から、ゲル内のCO2錯体の有効拡散係数を見積り、イオン液体中での自己拡散係数推算値と比較することで、ネットワーク濃度とCO2拡散性の関係を検討する。また、CO2透過性については、種々圧力の下でガス透過試験を行い、耐圧性を評価する。以上の評価から、優れたゲル内拡散性と耐圧性を有するイオンゲル設計指針を得る。
|