2016 Fiscal Year Research-status Report
閉塞監視機能を備えたマイクロ流体分配デバイスの設計
Project/Area Number |
15K18264
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
殿村 修 京都大学, 工学研究科, 助教 (70402956)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | マイクロリアクタ / モニタリング / 閉塞検出・診断 / 流体分配 / 設計 / センサ配置 / 最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度に得られた結果を基にして,H28年度(2年目)は,液系/固液系のリアクタを並列化したモデルプラントを対象に,単一/複数のリアクタ閉塞を検出・診断可能な並列化構造における流体分配部の流路抵抗とセンサ位置の最適設計を行った。また,プロセス全体の圧力損失に対してリアクタ並列部の差圧が支配的である場合,連続運転を停止することなく閉塞状態から正常状態へ回復する操作が可能であるという既往の成果を踏まえて,圧力損失制約を考慮した最適設計アルゴリズムを開発した。何れにおいても実験検証用プロセスを製作し,開発した手法の有効性を確認した。さらに,複数リアクタの閉塞検出・診断において,流体分配部の流路構造やセンサの違いが,診断性能に与える影響をケーススタディにより検討した結果,分合式流体分配構造と流量センサを用いたときに測定誤差に対するロバスト性が最も高くなることを明らかにした。 開発した手法の適用対象を並列気液スラグ流プロセスへ拡張することを目指し,矩形流路からなるT字混合器を用いた気液スラグ流生成プロセスのスラグ長さ予測モデルを構築した。混合器内の気液界面挙動をマイクロスコープで観察すると共に,設計・操作変数がスラグ長さに及ぼす影響を定量的に評価した。その結果に基づき,流路サイズと流量を入力とし,スラグ長さを出力とするモデルを開発した。同モデルは,モデルパラメータを少数の実験データから同定し,装置設計に利用可能である。構築したスラグ長さ予測モデルとH27年度に開発した流体分配器の流動モデルを組み合わせることにより,運転状態監視機能を備えた並列気液スラグ流プロセスの設計論と操作論の体系化に展開していくことが可能になった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の達成に向け,H28年度(2年目)に掲げた研究実施計画通り,順調に進展している。昨年度構築したカップリング反応を対象とした5並列プロセスにおいて,正常時の流体均等分配性(平均流量からの誤差10%)を改善すべく,リアクタとして用いた触媒固定化モノリス充填カラムを再生し,プロセスの再設計を行い,正常時の流体均等分配性の向上(誤差5%に改善),連続運転の安定性を確認すると共に,昨年度実施できていなかった各リアクタ閉塞時の閉塞検出・診断性と反応成績の関係を定量的に評価し,提案手法の有用性・必要性を実証した。そして,リアクタ閉塞時,プロセス全体のシャットダウン・スタートアップといった複雑な操作を行うことなく,プロセス全体の連続運転を継続したまま,閉塞の検出・診断・回復の一連の操作を実現できる操作法の有用性も実証した。 また,複数リアクタの閉塞検出・診断手法において,流体分配構造(分合式,マニホールド式),利用可能なセンサ(圧力センサ,流量センサ)のどの組み合わせが閉塞リアクタ特定に有利であるかについて検討し,測定値に,平均が0,標準偏差が正常値の1 %程度の正規分布に従う誤差があるとき,分合式と流量センサを用いた場合は閉塞リアクタ特定成功率が99 %以上となったのに対し,その他の組み合わせを用いた場合の閉塞リアクタ特定成功率はいずれも90 %を下回ることを示した。 さらに,並列気液スラグ流プロセスの混相系を対象とした検討では,気液スラグ長さ予測モデルを物理モデルベースで構築し,モデルパラメータを実験データから決定することでモデルの精度を向上させることに成功した。 このように,研究実施計画の項目をクリアし,最終年度の計画に踏み込んだ成果も出すことができている。以上より,区分(2)を選択した。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに得られた結果を基にして,リアクタ並列数を増加させながら,均相系プロセスや気液/液液二相流などの混相系プロセスを対象に複数リアクタ閉塞診断機能を備えた並列化構造を提案・設計する。その際,リアクタ閉塞の他に,流体分配・合流部での閉塞も想定されるため,それらの閉塞箇所を区別・特定できる診断アルゴリズムの開発を目指す。また,リアクタ並列数の増加に伴い,流体分配・合流部を構成する流路数も増加し,それに応じて閉塞発生リスクも高くなると想定されるため,流体分配・合流の流路構造の基本形から流路を削減する簡略化設計について併せて検討する。以上の「閉塞監視機能を備えたマイクロ流体分配デバイスの設計」に取り組んだ結果をもとに,並列マイクロリアクタシステムの設計論と操作論の体系化に展開していく。
|
Causes of Carryover |
当該年度は,液系/固液系の単一/複数閉塞監視機能を備えたマイクロ流体分配デバイスの設計における提案手法の基本的特性を評価することを優先したため,既存のシミュレーション環境でモデリング・シミュレーション・最適化が可能な5並列プロセスを対象とした。また,実験検証用プロセスを製作において,3Dプリンタを利用できる環境が学内に整備されたため,3Dプリンティングにより流体分配デバイスを加工することができた。以上の経緯から次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度の成果を踏まえて,最終年度では,リアクタ並列数の増加を伴うことから,対象プロセスが大規模かつ複雑になり,そのようなプロセスの構造系と計測制御系の最適化を行うため,整数変数を含む大規模な最適化問題を解く必要がある。そこで,高速演算が可能で大容量メモリを搭載した並列計算機環境を構築するためCPUとメモリを追加購入することが望ましい。また,実験検証用プロセス開発においても,大流量送液ポンプ,気体用流量制御装置などを購入する必要がある。以上の品目に次年度使用額を充てる。
|
Research Products
(5 results)