2017 Fiscal Year Research-status Report
閉塞監視機能を備えたマイクロ流体分配デバイスの設計
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15K18264
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
殿村 修 京都大学, 工学研究科, 助教 (70402956)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロリアクタ / モニタリング / 閉塞検出・診断 / 流体分配 / 設計 / センサ配置 / 最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
[1]複数リアクタ閉塞診断において,リアクタ並列数を5から10に増やし,昨年度までに構築した設計法および診断法の有用性を検証した。検証用ケーススタディでは3リアクタが閉塞するシナリオを複数用意し,従来法より構築した手法の方が高い閉塞箇所特定成功率を示したことから,その有用性を確認することができた。 [2]並列リアクタの閉塞を診断の対象としていた昨年度までの手法を拡張すべく,閉塞が並列リアクタと分合式流体分配装置(SRFD)のどちらで生じているのかを区別可能な方法を開発した。開発した方法では,SRFD内圧力計(P0)とSRFD入口圧力計(P1)を用いる。リアクタ閉塞の場合はP0とP1の両方が大きな影響を受け,SRFD内流路閉塞の場合はP0の方がより大きな影響を受ける。この影響の違いを利用して閉塞箇所を区別する方法の有用性をケーススタディにより確認した。 [3]並列化された多段混合反応系を対象とし,流体等量分配と計測・制御のし易さを考慮した流体分配装置を設計した。設計時,これまでに開発した流動モデルを用い,ソルバはmultistart scatter search 付き非線形最適化(内点法)から粒子群最適化に変更した。ソルバの変更により,リアクタ並列数や混合段数が増えるにつれて設計問題の規模が大きくなり求解に多大な時間を要していた問題を解決することができた。リアクタ並列数,原料混合段数,原料流量比,原料種(粘度,密度など)を変更した複数のシナリオを用意し,シナリオ毎に閉塞診断性能を最大化するSRFD流路抵抗とセンサ位置を導出し,設計結果の有効性を実験で検証した。流体分配装置の流路構造の簡略化設計についても検討し,1段目の一方の原料供給操作にSRFD,残り全ての原料供給操作にマニホールド式流体分配装置を用いることで,より単純な並列化構造で閉塞診断可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の達成に向け,H29年度に掲げた研究実施計画通り,順調に進展している。研究実績欄に記載した項目[3]に説明を加えると,並列化された多段混合反応系を対象とした閉塞診断では,閉塞リアクタの存在するラインに加えて,閉塞リアクタが何段目の混合の後に存在するかを特定する必要がある。そこで,Step 1)各マニホールド式流体分配装置(MFD)の入口に設置した圧力計で観測できる圧力変化を利用して,閉塞リアクタが何段目に存在するかを特定する,Step 2)分合式流体分配装置(SRFD)内部に設置した2器の圧力計で観測できる圧力変化を,予め用意した圧力変化量図にプロットし,閉塞リアクタの存在するラインを特定する,という2ステップによる閉塞診断手法を提案した。これにより,閉塞リアクタの存在するラインと段を特定することが可能になった。さらに,これまでの閉塞診断手法では,閉塞発生時の圧力変化は正にしか増加しないため,閉塞診断に用いる圧力変化量図の第1象限しか利用できない。リアクタ並列数が増加すると誤診を招く可能性が出てくるため,圧力変化量図の4象限全てを利用する手法に改良することが望ましい。そこで,SRFD入口の圧力計とSRFD内部に設置した圧力計の差圧を用いてプロセス監視を行うことにより,圧力変化量図の4象限全てを利用することに成功した。改良法は,リアクタ並列数が増加しても高い閉塞診断性能を発揮できる方法として有用である。以上より,区分(2)を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画の項目を概ねクリアしているものの,単相流から多相流(気液二相スラグ流など)に拡張した際,流体の圧縮性などに由来する不安定流動が新たに確認され,その問題の解決にH30年度に取り組む。まず,これまでに構築した流体分配装置の流動モデルとT字デバイスで生成されるスラグ体積予測モデルを組合わせてシミュレーションを行い,実験で観測された不安定流動を再現する。そして,設計・操作条件の流動安定性の関係について考察・整理する。そこで得られた知見に基づいて,安定操作を実現する設計指針を提示し,これまでに取り組んだ成果と併せて,並列リアクタシステムの閉塞監視機能を備えた流体分配デバイス設計法の体系化に展開していく。
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Causes of Carryover |
(理由) 単相流を対象とした閉塞監視機能付き流体分配デバイスの設計結果をまとめて論文投稿するにあたり,追加実験の実施が必要となった。また,系を単相流から多相流に拡張した際,流体の圧縮性などに由来する不安定流動が新たに確認され,その問題を解決することで研究目的をより精緻に達成することが可能になると考えた。以上の経緯から補助事業期間の延長を申請し承認された。 (計画) 実験検証用プロセス開発において,流体分配装置の材料費,送液ポンプ,気体/液体用流量計測・制御装置を購入する必要がある。以上の品目に次年度使用額を充てる。
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Research Products
(5 results)