2017 Fiscal Year Research-status Report
クラスター錯体の金属原子上の活性点を利用した新規触媒反応の開発
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15K18267
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
長島 佐代子 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (20442999)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 不均一系触媒 / クラスター錯体 / 無機材料 / 固体酸 / ルイス酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
クラスター錯体は金属-金属結合をもつため、新しい反応性を示す触媒として期待されてきた。しかし配位子が一酸化炭素であるカルボニルクラスターでは金属間での結合が弱いため、高温下でクラスター骨格を保持したまま触媒として働いた例はほとんどない。これに対し、配位子として硫黄原子を用いたスルフィドクラスターを用いると、クラスター骨格が熱に強いため、加熱条件下でも安定に保たれたまま、触媒として機能することが期待される。シリカゲルに担持した外部配位子がヒドロキソ配位子であるレニウムスルフィドクラスターを水素気流下加熱処理すると、2つのヒドロキソ配位子から1つの水分子が脱離し配位不飽和点が生じる。これが高温でも安定なルイス酸として働く。 本年度はこのクラスターについて触媒反応探索を行った。その結果、アニソールと塩化ベンゾイルによるFriedel-Craftsアシル化反応が選択的に進行することを見出した。アシル化剤として塩化アセチル、芳香族化合物としてキシレン、トリメチルベンゼンを用いた場合も選択的にアシル化が進行した。一方、レニウムスルフィドクラスターは外部配位子の違いによって活性化機構が異なることが予想される。そこで既存ではあるが、触媒としての報告例がない外部配位子が塩素や水であるクラスターにおいてもその活性化機構についての検討も行い、ブレンステッド酸点として作用することを予備的に見出した。また既存のクラスターとは異なる触媒活性点の発現が期待できる新規レニウムスルフィドクラスターを合成し、その構造について明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は外部配位子がヒドロキソ配位子であるレニウムスルフィドクラスターにおいて、そのルイス酸点を利用したFriedel-Craftsアシル化反応が進行することを見出した。異なる外部配位子をもつレニウムスルフィドクラスターについても検討を行い、外部配位子の違いによって活性化機構が異なることを明らかにした。この内容について、論文執筆を開始できる段階になった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた知見を活かしルイス酸触媒や白金族金属代替触媒を念頭に、新しい触媒反応の開発を行う。必要に応じシリカやアルミナ、活性炭などの担体へのクラスターの担持も行い、活性や選択性の向上も目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:本年度の研究経費に残額が生じた理由としては、消耗品等の物品費の支出が予定よりも抑えられたこと、また研究代表者の実験室のある建物が耐震補強のため改修となり、スペースの都合上、新たな触媒反応装置を組み立てることができなかったことが主な理由である。 次年度使用額の使用計画:繰越金については、新たな触媒反応装置組み上げ部品購入費に充てる。試薬、物品等消耗品の購入にも充当する。また、情報収集や得られた成果の学会発表の機会も増やす予定である。
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