2015 Fiscal Year Research-status Report
新規ヘテロ接合型分子集合体の創製による自己集合材料の新しい機能化法の提案
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15K18277
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
若林 里衣 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60595148)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ペプチド / 自己集合 / フッ素含有置換基 |
Outline of Annual Research Achievements |
両親媒性ペプチド (PA) からなる自己集合材料は、分子設計に応じた構造・機能の改変自在性やペプチド由来の生理活性を併せ持つ、医用材料創製において魅力的な基材である。集合に伴い機能性ペプチドリガンドを自在に材料表面に集積化させることで、特定の生体分子に対する結合力の向上やレセプターの多量体形成が可能となることから、細胞に作用する材料開発において注目を集めている。本研究では、さらに複雑かつ高度な細胞作用の実現のために、複数のリガンドの局在化を可能とする、ヘテロ接合型のペプチド集合体の創製を目指している。その戦略として、PAの疎水部の化学構造に注目し、相溶性の低い疎水性置換基ペアを導入したPAを用いることで、互いが局在化した共集合体が得られると期待した。 平成27年度は、フッ素系化合物の疎油性に注目し、長鎖アルキル基ペアとして、ハイドロカーボン系アルキル基とフルオロカーボン系アルキル基を導入したPAを合成した。両者は、自己集合形成の濃度、熱安定性、集合体形状など、大きく異なる自己集合の性質を持つことが見出された。さらに、共集合体の創製へ向け、蛍光分子を用いた集合体の可視化を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に挙げた主な研究項目は、PAの合成と自己集合評価である。ペプチドに導入した疎水性置換基だけでなく、ペプチド配列の違いによるPAの自己集合挙動の変化を調査した。想定よりも多種類のPAを合成し、その自己集合挙動の観察から、集合促進部位の設計指針を得ることができた。 具体的には、ペプチドの中でも集合促進ペプチドとしての疎水性アミノ酸が重要と考え、芳香族性、非芳香族性の疎水性アミノ酸を導入した際の集合挙動を観察した。その結果、疎水性置換基をハイドロカーボン系からフルオロカーボン系アルキル基に変更した際の集合形状の変化は、芳香族性アミノ酸の有無により逆転した。これは、PA集合形成において芳香族アミノ酸間のπ-π相互作用が重要な役割を担うことを示唆する重要な結果である。 一方、ヘテロ接合型PA集合体の創製に関しては、可視化のための、蛍光分子を用いた予備検討に留まっており、次年度以降に詳細な検討を行う予定である。 以上より、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までに、疎水部の異なるPAの設計指針を得ることが出来た。平成28年度以降は、まずヘテロ接合体の調製手法および分析手法の確立を第一目標とする。調製手法としては、溶液条件の最適化 (PA濃度、温度、pHなど) だけでなく、化学的刺激の利用 (pH変化、化学構造変換など)、物理刺激の利用 (超音波照射など) を検討する。また、ヘテロ接合体の分析手法も挑戦的課題である。平成27年度には、蛍光分子との親和性の差を利用した可視化を検討したが、各種プローブ分子 (蛍光分子、金属錯体など) の直接修飾や、リガンド-レセプター相互作用を活用した可視化などを検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究は、予算の範囲内で計画に沿って実行することができた。次年度の初めに行う集合体の分析のための試薬・物品費として、有効活用するために、残額は次年度使用額とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究費は、主にペプチド合成用の試薬・消耗品、分析機器使用に係る各種試薬・消耗品・セル・基板などに充てる。
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Research Products
(2 results)