2016 Fiscal Year Research-status Report
空力性能を向上させるモーフィング羽ばたき翼構造システムの開発
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15K18284
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永井 弘人 九州大学, 工学研究院, 助教 (50510674)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 羽ばたき翼 / モーフィング / MAV / ドローン / 空力弾性 / 異方性材料 / コルゲート構造 / 構造非線形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、羽ばたき型超小型ドローンの空力性能の向上を目指し、羽ばたきの各瞬間で常に翼が最適な空力形状となるように、翼構造を制御するモーフィング羽ばたき翼の開発を目的としている。本研究では、翼の受動的な変形を利用することで、複雑な制御機構を必要とすることなく、軽量かつ小型なシステムでのモーフィング羽ばたき翼の開発を目指す。そのために、最適な翼変形を実現するための翼構造および駆動機構について研究を行っている。平成28年度までの研究により、以下の成果を得た。 1)翼の構造異方性を利用したモーフィング羽ばたき翼: 翼の最適な変形を実現するために、羽ばたき翼が持つべき異方性構造について研究を行った。翼に構造異方性を与えるために、波板構造を用いたコルゲート翼と、平板に強化繊維を配置した複合材料翼の2種類を用い、それぞれの設計変数を変化させて、最適な翼構造を数値解析により明らかにした。コルゲート構造は軽量化の点に優れ、異方性平板翼は空力性能に優れており、空力性能の向上と軽量化の両方を達成するためには、両者の組み合わせが重要であることが明らかとなった。 2)翼の構造非線形性を利用したモーフィング羽ばたき翼: 翼を構成する膜の張力変化により剛性を制御し、最適なモーフィング状態を達成する翼構造について研究を行った。膜の板厚および拘束条件を変化させた解析を行い、その翼構造における基本的な設計指針を示した。また、実証模型を用いて推力および変形応答の測定を実施し、翼の性能評価および解析コードの検証・改善を行った。 3)ヒンジ型モーフィング羽ばたき翼: 前後2枚翼をヒンジで接続し、そのヒンジ角を変化させることで、常に最適なキャンバを実現させるヒンジ型モーフィング羽ばたき翼について、最適なヒンジ角制御とヒンジ位置を数値解析により明らかにした。また、ヒンジ型羽ばたき翼の翼断面形状効果を実験的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、簡単な機構で最適な翼の変形状態を実現するモーフィング羽ばたき翼構造システムを開発し、それにより羽ばたき翼の空力性能向上を目的としている。それを達成するための本研究のアイデアとして、羽ばたき翼の駆動方式および翼の弾性変形を効果的に利用することを提案している。当初の研究計画として、(A)翼の弾性変形を利用したモーフィング構造システム、(B)駆動機構制御によるモーフィング構造システム、(C)翼の弾性変形および駆動機構制御の両方を利用したモーフィング構造システム、を挙げており、これまでに、(A)および(B)について、その設計ツールとなる流体/構造連成解析コードの開発、模型実験による数値解析結果の検証実験、最適な翼構造に対する数値的研究を主に行った。今後の課題は、これまでの研究成果を統合した(C)の研究を実施し、より実用的なモーフィング翼構造を研究開発することであり、具体的に以下の課題が挙げられる。 1)構造異方性を利用したモーフィング羽ばたき翼: 翼のスパン方向およびコード方向の剛性比を最適にすることで、推力およびパワー特性が向上することが明らかとなった。現状のモデルでは、翼全体が均質な構造で構成されたものであり、より局所的に構造異方性を配置することで更なる性能の向上が見込まれる。また、実用化する上では、強度も含めた翼構造の評価が今後の課題である。 2)構造非線形性を利用したモーフィング羽ばたき翼: 膜の張力変化に伴う構造非線形性を利用することで、翼断面形状モーフィングによる翼の空力性能向上が見られたが、実用化する上では、翼の強度も含めた検討が必要である。 3)ヒンジ型モーフィング羽ばたき翼: 前後2枚翼をヒンジで接続し、そのヒンジ角を制御することで、空力性能が向上することを数値解析により明らかにした。今後の課題は、それを実験的に検証することである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、(A)翼の弾性変形を利用したモーフィング構造システムの研究開発、(B)駆動機構制御によるモーフィング構造システムの研究開発、(C)翼の弾性変形および駆動機構制御の両方を利用したモーフィング構造システムの研究開発、を計画しており、平成27年度および平成28年度において、主に(A)および(B)について実施し、それらの基本的な性能を明らかにした。平成29年度では、(A)および(B)の研究をさらに発展させ、より実用的な翼構造システムを研究すると共に、両者を融合した研究(C)を進める予定である。また、これまでは数値解析によってモーフィング羽ばたき翼の基本性能の評価を行い、それを簡易的な実験によって検証してきた。これまでの実験により、モーフィング羽ばたき翼の実用化において、翼の強度評価が重要であることが分かった。平成29年度はモーフィング羽ばたき翼の実証試験に取り組み、実用化に向けた課題を洗い出すことで、実現可能なモーフィング羽ばたき翼構造システムの提案を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、平成27年度に発生した繰越額によるものであり、平成28年度の支出額は当初計画の通りである。平成27年度では、主に解析ツールの開発および解析による数値的設計に重点をおいて実施したため、実験装置の製作開発費に割り当てる金額が計画より少なくなった。また、研究体制に大学院生2名が参加したことにより、「人件費・謝金」が節約できた。他に、学生の海外出張旅費を「旅費」として計上していたが、学生の海外出張についての補助金を獲得できたため、その費用が節約できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度では、実証模型実験の実施に取り組むため、その実験装置の製作・開発・実施費用として割り当てられる。
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Research Products
(7 results)