2015 Fiscal Year Research-status Report
AUVの撮影度評価に基づく観測経路生成の広域調査実用化
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15K18291
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 芳紀 東京大学, 生産技術研究所, 特任研究員 (90635210)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海洋工学 / 海洋探査 / 自律型海中ロボット / ロボットナビゲーション / Path Re-planning Method |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自律型海中ロボット(Autonomous Underwater Vehicle, AUV)による海底画像観測の効率化のため、1度の潜行で複雑な海底を高被覆率に観測するためのAUVナビゲーションを実海域の広域調査で実現する。AUVに内蔵されたメインコンピュータの負荷増加を抑えるため、本システムはAUVに追加可能なハードウェアモジュールとして作成する。ハードウェアモジュールはGPU(Graphics Processing Unit)を主体とし、GPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units)によってGPUの持つ高速なメモリ・インターフェース機能と高い並列処理能力をCPUと協調させ、1,000平方メートルオーダーの広域観測に対応する。 平成27年度は、GPGPU 開発環境を整え、ソフトウェア開発を行った。ハードウェアに関しては、NVIDIA製のハイパフォーマンスコンピューティング用途に特化したGPUを導入予定であった。しかしながら、平成28年度に本システムにより適していると思われる次世代GPUがリリースされる動向が見られたため、GPUの導入は平成28年度に見送った。CPU と GPU の効率的な協調動作のためにはプログラムコードの最適化が不可欠であった。そこで、プログラムコード最適化のための動作シミュレーションおよびデバッグ用データ取得のため、申請者が所属する研究室が過去のAUV実海域試験で取得した多量のデータを利用するとともに、鹿児島湾熱水噴出域(水深約200メートル)、静岡県内浦湾(水深約35メートル)、沖縄トラフ与論海穴(水深約670メートル)でそれぞれ実海域実験を行い、海底のサンプルデータを新規に収集した。実海域実験で得られた結果については、速報として口頭発表にて成果を発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に従い、おおむね順調に目的を達成できている。具体的には、本システムの主幹アルゴリズムであるPath Re-planning Methodで課題とされているCalculationフェーズの高速化のためGPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units) 開発環境を整え、ソフトウェア開発を行った。開発中の本システムでは、導入するGPUの性能に左右されるが100倍以上の高速化が可能であることが確認できた。ソフトウェア開発において、デバッグおよびシミュレーションに用いるデータとして、過去の実海域試験で得られたサンプルを使用した。さらに、7月に鹿児島湾熱水噴出域(水深約200メートル)、8月に静岡県内浦湾(水深約35メートル)、12月に沖縄トラフ与論海穴(水深約670メートル)でそれぞれ実海域実験を行い、最大約2,500平米の海底のサンプルデータを新規に取得した。ハードウェア面においては、年度末にハイパフォーマンスコンピューティング用途に特化しており、AUVに搭載可能なGPU(Graphics Processing Unit)を購入する予定であった。しかし、平成28年度に次世代GPUがリリースされる動向が見られた。次世代GPUでは倍精度浮動小数点演算性能が従来と比較し25倍に強化され、またメモリ帯域も2倍以上に強化されるため、高い演算処理能力と高速なメモリ・インターフェースを必要とする本システムにより適している。そのため、GPUの導入は平成28年度に見送った。本システムの開発にあたり、平成27年度のデバッグおよびシミュレーションの段階では従来のGPUでも充分に対応可能であったため、GPU購入の遅れは研究活動の進行上支障は生じなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に引き続きソフトウェアの最適化を実施する。GPGPUプログラムの最適化に加え、CPUが持つ拡張命令セットを導入する。CPUの拡張命令の使用は、プログラムを実行可能なCPUを限定してしまう反面、特定のCPUにおいて従来と比較し数倍から数10倍以上の処理速度向上が期待できる。また、平行してAUVへのハードウェア実装を実施する。本研究では、既存のAUV Tri-TON 2(最大水深2,000メートル)を用いる。Tri-TON2 はカメラとフラッシュおよび光切断のためのシートレーザーを前方、下方にそれぞれ2組持つ海底画像観測用 AUV であり、GPUの導入やケーブル・治具類の追加などの改造により本システムの実装が可能となる。AUV Tri-TON 2実機を用いて、1,000平方メートルオーダーの広域観測において本システムの主幹アルゴリズムが数分以内に完了できることが確認できた時点で、鹿児島湾での実海域試験(水深約100メートル)の他学術的に興味深い海域で実際に本システムを運用する。 本システムの開発および実海域試験で得られた結果はAUV 2016 Workshopをはじめとする国際会議などを通して成果を発信する。
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Causes of Carryover |
本研究で開発中のシステムにはGPU(Graphics Processing Unit)の導入が必要である。そこで平成27年度末にハイパフォーマンスコンピューティング用途に特化したGPUを購入予定であった。しかしながら、平成28年度に次世代GPUがリリースされる動向が見られた。次世代GPUでは倍精度浮動小数点演算性能が従来と比較し25倍に強化され、またメモリ帯域も2倍以上に強化されるため、高い演算処理能力と高速なメモリ・インターフェースを必要とする本システムにより適していると思われる。そのため、GPUの導入およびこれに伴うAUVの改造は平成28年度に持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
NVIDIA製次世代GPU「Pascal」がリリースされ次第、本システムのAUV実装に最適なGPU製品を選定、導入する。AUVへのGPU導入にあたり、AUV内蔵のコンピュータのI/Oポート改造やケーブル・治具類の追加などの改造が必要である。これらGPUの導入やそれに伴うAUVの改造費用を次年度使用額と相殺する。
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