2015 Fiscal Year Research-status Report
高精度三次元CFD-DEMによるグラウト粒子-流体連成挙動の解明
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15K18299
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 浩之 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (60610178)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 三次元CFD-DEM / グラウト浸透 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国のように岩盤の割れ目や地下水が多い地質環境を考慮すると、地下空間を利用する際には土質地盤や岩盤の流体浸透挙動を制御するグラウト技術は必要不可欠である。しかし、グラウト浸透メカニズムについては論理的な裏付けがなく、実際の設計、施工に際しては現場技術者の経験に基づき決定されているのが現状である。また、従来の二次元解析では奥行き方向への粒子や流体の流動が表現できないため、き裂入り口付近で粒子がアーチ構造を形成すると、瞬時に流動が停止するという問題点が明らかになっている。 そこで、本研究計画では、グラウト粒子-流体間相互作用を厳密に考慮し、粒子の三次元的な流動挙動をも再現可能な三次元CFD-DEMコードの開発を行い、岩盤中のグラウト流動挙動の解析を行う。これにより、不明瞭であったグラウト流動挙動を詳細に把握、制御することが可能となり、合理的な設計・評価に資することができる。 平成27年度の研究においては研究の基礎となる三次元CFD-DEMコードの開発を行った。グラウト流動挙動には、き裂表面への吸脱着、セメント粒子同士の電気的反発、凝集・結合や、加圧脱水、き裂表面のラフネスなど種々の物理・化学的現象が複雑に影響しており、これらの影響について表現可能な解析コードを構築した。さらに、開発した三次元CFD-DEMコードを用いて単純な条件のもとでシミュレーションを行い、実験データや理論解と比較することでCFD-DEMコードの妥当性および適用性を検討するとともに、最適な境界条件を決定するために必要な基礎的な解析データの蓄積を行った。 また、これまでの試計算の結果から、三次元計算は膨大な数のセメント粒子と流体計算における計算格子を取り扱う必要があるため、将来的に現場スケールでのグラウト適用を考慮した解析を行うためには解析コードの高速化が必須であることが明確となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成27年度は研究の基礎となる三次元CFD-DEMコードの開発を行い、開発した三次元CFD-DEMコードを用いて単純な条件のもとでのシミュレーションを実験データや理論解と比較することでCFD-DEMコードの妥当性および適用性を検討するとともに、最適な境界条件を決定するために必要な基礎的な解析データの蓄積を行うことを目標としていた。上述したように、予定通りに基礎的な解析コードの構築に成功しており、基礎的な解析結果の報告に至っている。そのため,研究目標は順調に達成されていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度に開発、検証を行った三次元CFD-DEM解析コードを用いて、研究協力者であるDraganivic 、 Stille (Royal Institute of Technology (KTH)、 Sweden)が行った岩盤き裂を模擬した平行平板定圧注入試験装置“short slot”を用いた室内試験を対象としたシミュレーションを実施する。き裂表面への吸脱着、セメント粒子同士の電気的反発、凝集・結合や、加圧脱水、き裂表面のラフネスなど種々の物理・化学的現象についてパラメータスタディを行うことで、グラウト流動挙動に影響を及ぼす要因の抽出およびそのメカニズムについて詳細な検討を行う。これにより、短時間にいかに多くのセメントを注入できるかといった効率的なグラウト注入手法に関する知見が得ることが出来る。また、現場スケールでの三次元CFD-DEM解析の実現に向けた解析コードの高速化手法の検討にも着手する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、初年度の研究計画が基礎的な解析コードの開発であり、その成果が国際学会発表の水準にまでは達していないと判断したことから、国際学会での発表を行わなかったため、旅費が当初計画より少なかったことがあげられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、平成27年度の未使用分と平成28年度請求額とをあわせての研究遂行に使用する予定であり、大規模計算を実行するために必要に応じて並列計算に適した計算機の購入やレンタルを行い、計算機資源を確保することを計画している。また、国内外の研究協力者との詳細な意見交換や情報収集、研究成果の発表のため国内旅費と外国旅費を計上する。
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