2016 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ波後方散乱計による低域混成波高密度限界の研究
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15K18303
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻井 直人 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (20707351)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マイクロ波散乱計 / 低域混成波 / 核融合プラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロ波を赤道面から送信し、プラズマ下部で受信する散乱計をTST-2トカマク本体に設置し、計測を開始した。様々なトロイダル磁場、プラズマ電流、密度について計測を行ったが、入射電力に対して-90 dBまでの範囲で低域混成波による散乱信号は検出されなかった。検出限界は、本体室内に漏れている電磁波を計測システムが直接拾ってしまうスプリアス信号の強度で決まっていることがわかった。電源及び制御電圧のノイズフィルタリングと、計測器全体の綿密な遮蔽により、2 msの積算時間でのスプリアス信号を熱雑音近くまで低減し、-90 dBの感度を得ることに成功した。理論的には-80 dB程で信号が検出されることが期待されていたが、実際には信号は検出されなかった。 理論推定をもう一度見直したところ、プラズマの磁気平衡推定の誤差が非常に大きく、低域混成波の軌跡が想定していたものと大きく異なる可能性があることがわかった。この結果を踏まえて、可能性のある様々な磁場構造に対して低域混成波を検出できるような送信・受信アンテナの位置・方向を再検討し、新たに散乱計を設計した。新設計では低域混成波アンテナからトロイダル方向に210度離れたポロイダル平面に計測器を設置する。マイクロ波の送信アンテナはプラズマ赤道面下部に設置し、受信アンテナは後方散乱に近い配位を含む4点に設置した。この位置では、磁気平衡の不確定性を考えても、いずれかの受信アンテナで散乱信号が検出されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の時点で、理論計算と装置の再設計を行なった関係で装置製作が遅れていた。H28年度は計測を開始したが、波が想定していた場所に存在しない可能性があるという知見から、平衡計算に問題があることが同定された。理論解析をやり直し、装置を再設計・製作したため、未だ検出には至っていない。ただ、当初から微小かつ不確定な散乱信号の検出を目指す難しい計測であることはわかっており、初期計測から8ヶ月で検出まで至らないことは想定の範囲内である。
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Strategy for Future Research Activity |
磁気平衡の不確定性を踏まえて、可能性のあるあらゆる波の構造に対して散乱信号を検出可能なシステムを設計した。今年度はこの装置による計測を行い、散乱信号の検出を目指す。また、これまでは低磁場赤道面に設置されたアンテナで励起された低域混成波の検出を目指していたが、H27年度末に新たに設置された上側アンテナで励起された波の方が波長が短く、検出が容易である可能性がある。上述の計測が成功するか否かに関わらず、上側アンテナからの波を計測する散乱計も開発する予定である。
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