2015 Fiscal Year Research-status Report
核融合炉のためのZnO結晶を用いた高耐久性計測窓の開発と評価
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15K18304
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山ノ井 航平 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 助教 (30722813)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射線損傷 / 窓材料 / 核融合 |
Outline of Annual Research Achievements |
大阪大学工学部上田教授の協力のもと、核融合実験炉ITERの炉心プラズマを想定したイオンビーム照射装置HIFITを用いてZnO結晶に水素及び重水素のイオンビームを照射し、窓材料の特性を調査した。水素と重水素のフラックスは10^20個/cm2/secで、それぞれ3時間照射した。照射後、明らかにイオン照射ダメージによる試料への着色が見られたが、その後、室温で保管すると着色がなくなりダメージの回復が見られた。照射直後より経過時間ごとに紫外域からテラヘルツ領域までの透過率を計測し、照射前の透過率と比較することで、イオン照射によるダメージの影響とその回復量の詳細データを得た。結果として水素の場合は数十時間の時間経過で十分に回復したが、重水素では回復までに数日かかり、ダメージの回復時間に大きな違いがあることがわかった。これは幾何学的同位体効果であると考えられる。実際には燃料に重水素とトリチウムが用いられる。ダメージが入った際にはより質量の重いトリチウムの影響が残り易いという結果を示している。AFMで表面を観察した結果、イオンビームにより、エッチングされた効果が見られている。これは他の候補材料でも同様のことが起こると言えるため、透過率現象の問題だけでなく機械的強度変化の影響を調べる必要があると考えられる。また、今回は室温、大気圧下での保管のみで回復が見られたが、積極的に加熱を行うことでさらに早い回復が見込まれるため、使用の際にダメージが発生したとしても用意に回復させることができ、窓材料としてはこれまでにない効果が証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ZnO結晶に対して水素と重水素イオンビームによるダメージの影響とその回復量を紫外域からテラヘルツ領域の超広帯域における透過率を中心に系統的に詳細なデータが得られた。明らかな同位体効果が見られ、核融合用の窓材料としての有用性と課題を明らかにすることができた。またZnO結晶が持つ励起子と格子欠陥由来の発光を時間経過とともに計測し、発光波長や発光寿命の変化を見る事で、結晶格子内で起こっている現象とのひも付けをすることができ、工学的な視点と材料と放射線の基礎物理の視点の両方から、有益な情報が得られた。他の候補材料としてサファイアが挙げられるが、サファイアでも同様の実験と計測をすでに終えており、ZnO結晶と比較できる状況である。ZnO結晶の有効性を示すとともに、試料表面のエッチングの影響など、従来は考えられていなかった問題を明らかにすることで他の材料への展開が期待できるところまで来ている。以上のように順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、トリチウムの遮蔽能力は窓材料として重要な要素である。ZnO結晶へのトリチウム暴露を行った研究報告はこれまでにない。トリチウムの暴露はトリチウムと水素の混合ガスのグロー放電により行い、高濃度トリチウムに曝した際の侵蝕度合いを評価する。 また、サファイア結晶のダメージの評価と物理を明らかにする。さらにXRDなどの計測を用いてZnO結晶とサファイアの両方で格子欠陥と照射した水素のインプラント効果を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
計測試料となるサファイアとZnO結晶を購入しようと考えていたが、これまでの試料と異なり、結晶軸が異なる材料を必要であったため、在庫切れ及び結晶育成に時間がかかるために納期が遅れることが明らかになった。結晶の製作のみを依頼し、購入を次年度に持ち越すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度の納期に間に合わなかったサファイアとZnO結晶を予定通りにH28年度に購入する。結晶研磨の状態を調べた上で発注を行う予定である。
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[Journal Article] Blue-shifted and picosecond amplified UV emission from aqueous chemical grown ZnO microrods2015
Author(s)
Melvin John F. Empizo, Kohei Yamanoi, Alexandra B. Santos-Putungan, Ren Arita, Yuki Minami, Mui Viet Luong, Toshihiko Shimizu, Elmer S. Estacio, Armando S. Somintac, Arnel A. Salvador, Roland V. Sarmago, Nobuhiko Sarukura
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Journal Title
Optical Materials
Volume: 48
Pages: 179-184
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Gamma-ray irradiation effects on the optical properties of bulk ZnO single crystals2015
Author(s)
Melvin John F. Empizo, Kohei Yamanoi, Kazuyuki Mori, Ren Arita, Keisuke Iwano, Masahiro Takabatake, Kazuhito Fukuda, Tatsuhiro Hori, Yuki Minami, Mui Viet Luong, Sadaoki Kojima, Yasunobu Arikawa, Toshihiko Shimizu, Nobuhiko Sarukura, Takayoshi Norimatsu, Hiroshi Azechi, Arnel A. Salvador, Roland V. Sarmago
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Journal Title
APPLIED PHYSICS EXPRESS
Volume: 8
Pages: 061101
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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