2016 Fiscal Year Research-status Report
リポソームをテンプレートとしたモリブデンナノ粒子合成法の実用化に向けた研究開発
Project/Area Number |
15K18315
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山崎 信哉 筑波大学, 数理物質系, 助教 (70610301)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | モリブデン / ナノ粒子 / リポソーム / テクネチウムジェネレーター / 結晶成長 / ミネラリゼーション |
Outline of Annual Research Achievements |
核医学診断で最も用いられているテクネチウム-99mはモリブデン-99から得られるが、これらの核種は半減期が短く、海外からの輸入に頼っている。しかし、供給が安定しないことから、モリブデン-99の国産化が進められている。そのうちのひとつとしてモリブデン100の中性子照射によりモリブデン-99ならびにテクネチウム-99mを得る方法が試みられている。本研究では、この収率を挙げるために、材料となるモリブデンのナノ粒子化を目的としている。 前年度は、球状リン脂質二重膜(リポソーム)を用いてモリブデンナノ粒子を合成する際の、リポソームの粒径を最適化した。また、結晶成長速度が速いために粒径が大きくなることが原因と考えられたため、これを解決するためにリポソームの組成を変化させて結晶成長速度に関する考察を行った。 実験では、リポソーム内部にモリブデン酸イオンを封入してカルシウムイオンを加えることで、リポソームの表面で生成するモリブデン酸カルシウムの粒子を得た。比較対象としてリポソームがない場合の結晶成長を観察した。リポソームは、中性のリン脂質ホスファチジルコリンおよびアニオン性リン脂質であるジセチルリン酸を用いた。またリポソームの物理的強度を高め、イオンの膜内透過速度を変化させるコレステロールの影響を検討した。 この結果、アニオン性リン脂質が多くなると、リポソーム内部から外部へのモリブデンの流出速度が遅くなることが分かり、ジセチルリン酸との静電反発によるものと考えられた。またコレステロール含有量が増えると、ジセチルリン酸よりもモリブデンの流出速度減少に大きく寄与することも分かった。これは膜の流動性と関係することが示唆された。さらに、リポソーム表面へのカルシウムイオンの吸着量はコレステロールの含有量が多くなるにつれて増加することが明らかとなり、この結果をもとにリポソームの組成を最適化した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、モリブデンナノ粒子をリポソームをテンプレートとして生成させるための条件設定を行った。また、結晶成長する際に有利になるリポソームの組成を決定した。 このほか、ナノサイズの粒子を得るための様々な物理化学的パラメーターも収集できつつあるため、順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの2年間で、ナノ粒子を得るための実験条件の最適化を行ってきた。 最終年度は、この収率向上を達成するために実験条件を設定することと、粒径のさらなる縮小化についても検討する。 また、回収する際の収率向上について検討を行い実験系全体における収率の向上について検討を進めて行きたい。
|
Research Products
(4 results)