2015 Fiscal Year Research-status Report
炭素析出を前提とした構造制御によるバイオマス燃料を用いた高温型燃料電池の高性能化
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15K18327
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
立川 雄也 九州大学, 共進化社会システム創成拠点, 特任助教 (70587857)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオマス / SOFC / 炭素活用 / 高効率発電 / 可視化評価手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内外に広く薄く分散して存在するバイオマスエネルギーを最も効率よく有効に活用するために、小出力発電に対応可能で、かつ分散型発電技術として有望視されている効率の高い固体酸化物形燃料電池(SOFC)をバイオマスのエネルギー変換技術として選択した。SOFCのシステム内に炭素を安定的に析出させることで、高効率かつ安定な発電技術として、バイオマス燃料SOFCに必要な制御機構の構築を行った。SOFC内部で、炭素が析出した現象の定量的評価技法として、光学カメラと熱画像カメラを利用した0時間から20時間までのIn-situ可視化と2つの画像を合成する画像解析技術を活用した。炭素の析出現象は、燃料電池の発電部位である電極の入口付近から出口にかけて析出量が段階的に分布していることが確認でき、そのIn-situの分布を解析することで、炭素析出の進展速度の定量化を行った。今後、様々なガス組成や微量な発電阻害物質が混入した場合などの分布への影響についてさらに詳細な評価を行う予定である。また、今年度実現したマクロ評価手法とは別に行う予定であった燃料電池電極の断面構造の電子顕微鏡によるミクロ構造評価なども加えて行う。また新たに、再生可能エネルギーであるバイオマスエネルギーの高効率利用と共に、将来の低炭素社会実現に向けた課題解決に向けたバイオマスエネルギーの有効活用手法について目標を設定し、燃料電池に供給されるガス組成の経時変化、運転温度の条件、求められるシステム効率をインプットとして、システムのプロセス解析技術を用いたバイオマスの有効活用技術の新たな開発についても検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の当初の目標の一つである「発電試験中の面内炭素析出挙動の可視光/赤外光カメラによる経時変化観察」について実際に運用・測定を開始し、固体酸化物形燃料電池の燃料極表面に析出する燃料由来炭素の挙動のIn-Situ可視化を実現した。また、その技術開発に不可欠な画像合成技術についても成果としてまとめ、この燃料電池のマクロ評価手法を論文としてまとめた。ただし、電子顕微鏡技術を利用したミクロの可視化評価についてはまだ有益な成果が得られていないため次年度以降の検討課題とした。また、燃料由来析出炭素を安定的に保持する環境を制御する技術について今年度設備を整備・拡充したので、次年度以降、その検討を開始する予定である。 加えて本研究コンセプトをさらに発展させた技術の開発・検討を開始し、現在成果物としてまとめる準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は当初の予定通り、①電極構造と材料の影響を評価した結果に基づいた新規電極構造を有するサンプルによる炭素析出量の制御実験、②炭素析出量の制御実験に基づく電極構造の最適化試験、③新規サンプルを用いた長時間耐久性能試験を行う。また前年度の残件であるミクロ可視化についてもその評価を継続して進める。また、現在進めている発展的な研究コンセプトの実現に向けた技術開発についても、準備ができ次第、評価を開始する。
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Causes of Carryover |
最も大きな理由として挙げられる点が、本研究で最も重要となる析出炭素を安定的に保持するための実験設備が不十分であり、現状の装置ではセルの安定的な環境制御が難しく改造を要することが確認でき、その設計に時間を要したことが要因として挙げられる。次年度の初旬に装置の改造を行い、制御装置の運用が開始されるにあたり、その当初予定していなかった改造費用捻出のため、申請初期に予定していた画像処理ソフトの購入(110万円)を取止めて研究室で共用運用されているソフトウェアに切替えを行う、また、予定していた学会(International SOFC Symposium グラスゴー)の費用を別予算から捻出するなどしたため、予算に変動が生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
理由で述べた通り、次年度に繰り越した予算の大部分は装置の改造費用として利用する予定である。4月中に初期改造として昨年度購入したガス流量制御装置を組み込むなどして約10万円程度の改造を実施予定であり、更なる追加改造を検討している。また、それに伴う新たなアルミナホルダーの購入(40万)や必要となる消耗品の追加購入などで次年度に繰り越した予算について利用する予定である。
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